2015 Fiscal Year Research-status Report
水生植物の元素集積に影響する環境要因の解明および水圏からの金属回収法の開発
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15K00595
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
原田 英美子 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (20232845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 昇 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, その他部局等, 上席研究員 (20215685)
永川 栄泰 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, その他部局等, 副主任研究員 (30587415)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水生植物 / オオカナダモ / マンガン / セシウム / 放射性元素 / 水圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
水生植物のMn集積については以下の研究を行った。琵琶湖水圏の彦根市の下石寺集落環濠におけるオオカナダモは高濃度のMnを含んでいる。その含有量は季節変動しており、春から夏では高く、秋にかけて減少することも前年度までの調査から判明している。今年度はこれまでの調査地に加え,北湖の調査地として長浜市、彦根市内の3か所,南湖の調査地として大津市の瀬田川洗堰付近の1か所を選び,オオカナダモを採集した。ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)などを用いて元素の集積量を測定し、地域的・季節的な変動を調べたところ、オオカナダモのMn集積量に採取地や採集年で著しく差がみられた。オオカナダモの元素集積におよぼす環境要因のうち、生物学的要因として、付着微生物の寄与について詳しく調べた。呈色試薬を用いて調べたところ、微生物が付着しているオオカナダモ葉表面に水に不溶性の酸化型Mnが大量に付着していることが確認された。オオカナダモにおけるMn集積には付着微生物が関与していることが考えられた。そこで、植物体表面の付着微生物を限界希釈法を用いて培養し、12株を単離した。ゲノムDNAを調製し、rRNAの配列を増幅させて解析し、種の判別を行った。いくつかの単離株では酸化型Mnを生産していることが明らかとなった。 水生植物の放射性Cs集積については以下の研究を行った。福島県にて沈水植物であるオオカナダモに加え、浮葉植物・抽水植物を採取し、放射性Cs及びK濃度を測定した。水生植物の形態がCs吸収に及ぼす影響が大きいことが明らかとなった。CsとKの挙動は類似していると考えられていたが、植物種によっては、シュートと根系でのCs比・K比が異なっていた。この結果から、植物体内においてCsとKの選別機構があるものと示唆された。更に植物リターや枯葉においても放射性Kは検出下限値以下であったのに対しCsは検出された等、異なる挙動を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度にオオカナダモ付着微生物株の単離に成功した。単離株のMn酸化能の評価を前倒しに行い、クローンライブラリ法による水生植物の群集構造を次年度以降に実施することにした。それに伴い、分子生物学実験に使用する機器の購入を次年度以降に延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
オオカナダモ付着微生物の単一株が得られ、環境中のMnの濃縮に関与している可能性が高いことがわかった。この微生物を利用した産業応用なども視野に入れた研究を推進する。
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Causes of Carryover |
放射性セシウム集積に関する研究成果発表を次年度以降に延期したことから、旅費を中心に次年度使用分が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「環境放射能」研究会参加旅費および論文投稿費用
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Research Products
(4 results)