2016 Fiscal Year Research-status Report
低品位リサイクルアルミの革新的アップグレード技術の創製
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15K00607
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
羽賀 俊雄 大阪工業大学, 工学部, 教授 (00212134)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 双ロールキャスター / クラッド材 / 接合界面 / 縦型高速双ロールキャスター |
Outline of Annual Research Achievements |
典型的な鋳造用合金であるAC4Cと展伸用合金のA3004から2層クラッド材の作製に成功した.AC4Cはリサイクル材より作製されている.表面にA3004の層を積層するだけで,リサイクル材の延性を改善するものである.接合状態は強固であり,繰返し曲げ破断試験においても剥離は発生しなかった.線分析の結果,AC4Cに含まれているSiはA3004に拡散しなかった.A3004を外側にした180度曲げにおいても破断することは無かった.また,A3004を外側にした条件では深絞りも可能であり,LDRは1.8に達した.このようにリサイクル材から造られた鋳造用合金にA3004をクラッドすることで,180度曲げや深絞りが可能になった.これは延性に乏しいリサイクル材が展伸材にアップグレードできたことを示している.また,アップグレードに使用した装置は,スクレイパーを装着した高速縦型双ロールキャスターであり,省工程のメリットと急冷凝固のメリットを兼ね備えている.AC4Cは,急冷凝固により共晶SiやAlSiFe系の金属間化合物が微細化したために延性が向上した.つまり,提案したプロセスは,急冷効果により材質の改善を図るとともに,クラッド化により延性はさらに改善される.プロセスは1工程で急冷凝固とクラッド板を作製することができる省エネの視点から優れたプロセスである. 芯材の融点が表材より低い3層クラッド材を鋳造するための3段縦型双ロールキャスター製作のための予備実験とその結果を基にして設計にも着手した.この方法は,1段目で鋳造した芯材に2段目と3段目で表材を1層ずつ接合する方法である.これにより芯材の溶解を防ぐことを目的とした方法である.上中下の双ロールキャスターのロールの配置を千鳥配置にすることで芯材とロールは面接触し,芯材の溶解を防ぐことができると考え,設計に着手し設計図は完成した.製作も90%終了した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画は終了し,平成29年度の研究計画に着手した.当初の計画では,リサイクル材を心材とする場合,つまり芯材の融点が表材より低い場合に接合界面が明瞭に存在し,繰返し曲げ破断試験で破断しないプロセスの構築が目的であった.従来は,芯材が表材の熱で溶けてしまい,クラッド材の作製は不可能と考えられていた.本研究では,表材を心材に片面づつ接合させる方式を考案した.2段の双ロールキャスターで予備実験を行った.このとき,ロールの配置が上下方向で同一平面上にあると芯材とロールの接触はロールキス部の線状となり表材からの熱をロールに移動することができないので,芯材が溶解してしまった.そこで芯材をロールに8分の1週程度巻き付けることにより,表材のからの熱をロールに逃がすことができた.上下のロールの配置を千鳥配置とすることで,芯材とロールとの接触距離を確保することができた.この方式に基づいて設計を完了した.また,3段の双ロールキャスターの製作も行い90%の完成度である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画を微調整しながら,目標の達成を目指す.新たに考案した設計を完了し,製作途中の3段の双ロールキャスターの完成を急ぐ.ロールを上下方向で千鳥配置にする方法により芯材の融点が表材より低い3層クラッド材の作製が可能な条件を明確にする.問題点は,2層目の表材を接合するとき,芯材とロールの間には1層目の表材があり,これが熱抵抗になり芯材の冷却を妨げないかということである.また,1層目の表材と2層目の表材の接合硬度は同等であるか,組織の差異はどの程度であるかなど,詳細に調査する必要がある.接合可能な芯材の温度も明らかにできると良いと考えている.
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Causes of Carryover |
体調不良により2回入院した.このため国際会議と国内の学会に出席できなかったため,その旅費と参加費が未使用となり残額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進度は,初期の計画より早いので,研究の幅と深さを増す. 実験装置の改良の費用と実験用の消耗品の購入に使用する.平成29年度は,3層のクラッド材の実験を行うので,装置の改良のための部品の購入費と消耗品の使用は1枚の板の3倍になる.そのため,繰越額は物品費の不足分をを補うにちょうど良い額である.
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Research Products
(5 results)