2016 Fiscal Year Research-status Report
島嶼における外来種陸産貝類の固有生態系に与える影響
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15K00624
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
冨山 清升 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (30272107)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国外外来種 / 国内外来種 / 生態系 / 生物地理 / 奄美群島 / 世界遺産 / ウスカワマイマイ / アフリカマイマイ |
Outline of Annual Research Achievements |
薩南諸島の外来種として、国内外来種であるウスカワマイマイ属の各種の変異をミトコンドリアDNAの解析により分析した。その結果、本種群は、現在記載されている亜種(ウスカワマイマイ、オオスミウスカワマイマイ、キカイウスカワマイマイ、オキナワウスカワマイマイ)は、亜種として成り立たないことがわかり、国内外来種としての異動も頻繁なため、遺伝的にグループ分けすることも困難だとわかった。国外外来種として、アフリカマイマイの生息現況調査を世界遺産候補地でもある奄美大島で行った。アフリカマイマイの移動能力を電波発信機を使って半年間追跡した成果を中心に発表した。 成果発表は、著書が1冊、査読付き論文が3本、査読無し論文が9本、国際学会発表が1回、国内学会発表が7回、シンポジウムの開催が1回、であった。査読付き論文は下記の通り。 片野田裕亮・中島貴幸・市川志野・冨山清升. 2016. 大隅諸島における汽水及び淡水産貝類の生物地理. 日本生物地理学会会報, 71. 41-51. 市川志野・中島貴幸・片野田裕亮・冨山清升・山本温彦・鈴木英治. 2016. トカラ列島口之島の陸産貝類相の構成と環境との関係. 日本生物地理学会会報 71. 53-68. Harumi Ohtaki, Kiyonori Tomiyama, Eiko Maki, Maya Takeuchi, Tatsujiro Suzuka & Saki Fukudome 2016. Mating behavior of the dioecious snail Cerithidea rhizophorarum .Adams,1855 ( Gastropoda; Potamididae) in the tidal flat of a mangrove forest. Biogeography 18.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外来種であるウスカワマイマイのDNA解析は、予定通りに実行することができた。mtDNA分析と平行して、殼形態の個体群間比較を進めており、ある程度の結果を示すことができた。殻形態の分析結果とmt-DNA分析の結果を付き合わせることにより、ウスカワマイマイ種群の国内外来種としての位置づけが明らかにできるであろう。 ウスカワマイマイは、作物や苗に付着した移動によって、全国的に広がっており、国内外来種としての側面を持っている。ウスカワママイの亜種には、本土に分布するウスカワママイ、大隅諸島~鹿児島県南部に分布するとされるオオスミウスカワマイマイ、奄美群島に分布するとされるキカイウスカワマイマイ、原名亜種で沖縄群島に分布するとされるオキナワウスカワマイマイ、隠岐に分布するとされるオキウスカワマイマイの5亜種が記載されている。今回検討した、オキウスカワマイマイを除く4亜種は、殼の形態が連続的で区別できないため、mtDNAのCOI領域の塩基配列を求め、各島嶼に分布する個体群間の類縁関係の分析を最尤法を用いて行った。その結果、従来認められていた4亜種は区別がつないことがわかった。島嶼間の変異よりも、本土集団間の変異の方が大きい事例もあった。島間の物資の流通による国内外来種の影響を考慮しても、本種をいくつかの亜種に分けることが不可能であることが解った。また、タママイマイとされることもある西表島のオキナワウスカワマイマイもウスカワマイマイと同じグループであり、台湾に分布するタママイマイとの類縁関係も再検討を要することが解った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、外来種によって攪乱されている、固有種陸産貝類の生息現況調査を合わせて行う。固有種であるタネガシママイマイ類の解析を行う。鹿児島県の島嶼に生息するタネガシママイマイの殻標本の形態解析を行い、本種における種内変異を殻形質に基づいて明らかにすることを目的とする。また、以前独自の方法で行われた本種の殻形質を用いた形態解析 (Tomiyama, 1984) の結果と、近年の手法を用いた本研究とを比較することも目的とした。ユークリッド距離を用いてクラスター分析を行った結果、トカラ列島中部・種子・屋久・宇治・草垣,トカラ列島北部・三島の2つのグループに分割出来た。マハラノビス距離を用いた場合は、トカラ列島・宇治・草垣,屋久・種子,三島の3つに分かれた。マハラノビス距離を用いた場合、地理的に近い個体群が同じグループに集まる傾向が強かったが、Tomiyama (1984)とは異なる結果となっていた。地理的に離れた個体群間で形態が類似するのは、陸続きだった時代に分散した個体群が、海に隔てられた後、環境条件などに応じて独自の形態変化を遂げ、その結果形態が類似したからだと考えられ、この解析を推進する。 ウスカワマイマイの殼形態の解析は引き続き行う。今年は最終年度のため、これまでの外来種陸産貝類の研究成果をまとめる作業に入る。
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