2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ecological and biological evaluation of plant pathogenic microorganisms in polar regions
Project/Area Number |
15K00626
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
東條 元昭 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (90254440)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 植物病原菌 / 極域 / 生物多様性 / 遺伝子資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
極域に生息する植物病原糸状菌の発生生態と遺伝子資源価値を明らかにすることを目的に1)高緯度北極域のスピッツベルゲン島における植物病原菌の定量的調査と、2)極域の植物感染菌やその近縁種の資源価値の評価と同定を行った。1)では2003年から1~2年毎に実施してきた菌量の定点観測データに2016年と2018年のデータを加えて、より長期的な分析を行った。とくに、コケ類に感染し枯死を起こすこともあるPythium属菌種の発生頻度と気象情報との関連を解析した。その結果、スピッツベルゲン島ニーオルスンのカギハイゴケ群落には、Pythium polare等の6種の低温本属菌が生息し、本属菌全体の分離頻度は2003年から2010年にかけて有意な増加が見られ、2010年から2018年にかけて徐々に菌量が低下していることがわかった。菌量の年次変化は菌種ごとに違いがあることもわかった。これらの変化は調査地における夏期の気温や雨量の変化に関係している可能性が示唆された。同じ地点でキョクチヤナギにに発生するRhytisma polareによる黒紋病が宿主の光合成に影響を与えることを明らかにした。さらに同島ロングイヤービエンにおいて積雪量の違いがコケに生息する低温性の本属菌の分離頻度と種構成に及ぼす影響を調べ、Pythium polareがすべての積雪深の部分において優占種として見られることを確認した。2)では、北極産のTrichoderma polysporumから雪腐病菌の1種に抗菌性を示す物質を単離した。また、南極域キングジョージ島のコケに感染する雪腐病を起こす担子菌を記載した。加えて、極域産植物病原糸状菌に近縁のいくつかの温帯産糸状菌の種同定を行った。さらに、温帯産のPythium属菌の1種1株がα‐リノレイン酸を吸収してEPAを生産することを示唆する結果も得た。
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Research Products
(7 results)