2016 Fiscal Year Research-status Report
Microcystisの群体集積によるアオコ発生メカニズムの解明
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15K00630
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Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
朱 偉 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 特別研究員 (70297787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 泰介 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 専門学芸員 (60344347)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アオコ / Microcystis / 群体サイズ / 細胞集積 / 浮上 / 吹送流 / 表層流 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度までの研究で、Microcystisが大きな群体をつくり、吹走流によって起きた乱流の撹拌を克服して水面まで集積し、湾部に集まってアオコになるプロセスがわかってきた。そこで2016年度は主として、以下の3つのポイントで研究を進めた。 1. 群体が浮上し水表面に集積するプロセスをシミュレーションするプログラムを作った。群体の重力密度、サイズからStokes式によって浮上力(上向き)を求め、同時に乱流強度、粘度で水と群体の間に起きる粘性摩擦力(下向き)を計算し、この二つの力のバランスで、FDMプログラムを編成した。このプログラムをもって太湖における群体の動きをシミュレーションし、検証を行った。 2. 群体の冬季における挙動を明らかにするために、5umのプランクトンネット(一般は75um)を自作して、年間を通してサンプリングした。調査した結果から冬季でも水中でMicrocysitis の単細胞が多く存在し、一部の小さい群体も生きていることがわかった。今までMicrocysitisは底泥の表層で冬季を過ごしているとされてきたが、水中でも単細胞あるいは小さな群体で越冬しているとする説を提起した。 3. 風による吹送流の特徴、特に表層水の水平方向の動きを捉えるために、ドップラー・レーダーを用いた。吹送流における表層薄いゾーンの水の流れがMicrocystisの水平集積の重要な働きになるため、この表層流の計測が重要だと思われる。ただし、ドップラー・レーダーが一般的に水面に設置し下向きに計測するため、センサーが水中に入っているため表層が測定できない。この問題を解決するために、ドップラー・レーダーを倒置して上向きに水の動きを計測したら、表層10~20cmだけの水が風によって動いていることが分かった。いわゆる表層流を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りMicrocystisの集積によるアオコ形成メカニズムを解明している。今までにMicrocystisの群体サイズ、実際湖沼におけるサイズの変化、群体サイズとアオコ発生の間の関係などを調査で明らかにしてきた。 Microcystisの群体の水中における分布について、現場調査、模型実験、浮上を影響する重力密度の計測、調査をしてきた。 Microcystis細胞群体が静止している水中ではなく、動いている湖沼の水にいるので、浮上、集積が水の動きに大きく影響されている。いわゆる乱流の影響を解明するため、ドップラー・レーダーを用い実際の湖沼で水の鉛直方向の動きを計測して、Kzという乱流強度係数で鉛直の動きを評価できた。 表層流の計測が上手くできたので、計画通りに研究が進んでいる。 さらに、シミュレーションプログラムを作ったことと冬季のMicrocystisの過ごし方についての研究は計画よりも進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
湖沼表層流の特徴を把握するために、引き続き計測する。表層流によるMicrocysitisの集積を定量的に計算できるように工夫する。 今まで鉛直集積を中心にして作ったプロクラムを水平集積の計算も取り入れ、湖沼と同じような集積プロセスになるように完成させる。 シミュレーションプログラムを用い、琵琶湖をはじめ、アオコを発生する湖沼実例をシミュレーションし、形成メカニズムを解明する。 群体が小型、あるいは単細胞で浮遊しているMicrocystisを効果的に検出するためのポリクロナール蛍光抗体法を確立し、琵琶湖および太湖で調査を試行する。
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Causes of Carryover |
代表者、分担者ともに、調査出張にあまり行けなかったこと、また研究用機材を他の関連研究と共用できたことにより、予想外に支出が抑えられたことが大きな要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ポリクロナール抗体の作製、研究補助のアルバイトの雇用、そして研究協力者の旅費などに重点的に用いる。
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