2015 Fiscal Year Research-status Report
食品工業汚泥を利用した高肥料成分バランス調整型堆肥の創出と肥料供給モデルの導出
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15K00631
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
宮竹 史仁 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (70450319)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 堆肥化 / 肥料成分調整型堆肥 / 食品工業汚泥 / 牛ふん / 温室効果ガス / 窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
堆肥化ではNH3などの揮散により窒素成分が失われ、肥料三大成分である窒素-リン酸-カリウムのバランスが悪くなり、ユーザーに取って使い難い肥料となってしまう。本研究は化学肥料の代替となる堆肥の開発とそれに伴う肥料供給モデルを作成することであり、特に平成27年度は(1)食品工業汚泥と牛ふん尿を原料とした高肥料成分バランス調整型堆肥の創出、(2)高肥料成分バランス調整型堆肥の製造過程で発生する環境負荷物質の収支解析、を明らかにすることを目指した。 平成27年度課題では、(1)約150m3の実証規模の堆肥化発酵槽を用いて、食品工業汚泥、牛ふん尿、さらには堆肥化過程で発生したアンモニアを水で回収したアンモニア水などを用いて堆肥化した結果、窒素-リン酸-カリウムが5.2-7.8-3.1(%-dm)の高肥料成分濃度の堆肥を製造することが可能であり、材料混合割合などの基礎知見を得た。これは一般的な牛ふん堆肥と比較すると窒素2.4倍、リン酸4.4倍、カリウムが1.1倍となる また、もう一つの課題である(2)成分調整型の堆肥化における環境負荷物質の収支を明らかにするために、精密小型堆肥化装置を用いて温室効果ガス(N2O, CH4)ならびに悪臭のNH3を連続的に測定した。その結果、窒素等を強化した成分調整型堆肥を製造する過程ではN2OやNH3の増加が懸念されたが、一般的な堆肥材料(牛ふん、鶏ふん、生ごみ、食品工業汚泥)による堆肥化と比較しても温室効果ガスやNH3排出量の著しい増加は観測されなかった。温室効果ガス排出量は生ごみ堆肥の製造時と同程度であり、NH3排出量については、鶏ふんの堆肥化よりも40.6%少ない排出量であった。なお製造後の成分は4.6-7.4-4.1(%-dm)であった。 以上のように、平成27年度の研究実施計画に基づき研究が遂行され、結果も十分得られていると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究実施計画は、(1)食品工業汚泥と牛ふん尿を原料とした高肥料成分バランス調整型堆肥の創出、(2)高肥料成分バランス調整型堆肥の製造過程で発生する環境負荷物質の収支解析の2点を行うことであった。 平成27年度は、この両方の課題に取り組み、以下の結果が得られている。(1)高肥料成分バランス調整型堆肥の製造方法(材料混合割合やNH3水の添加時期や添加量)などの基礎的知見を得ることができ、窒素-リン酸-カリウムが5.2-7.8-3.1(%-dm)の堆肥製造が可能であることを実証規模試験で明らかとした。また、この基礎知見によって、今後更なる肥料成分の向上が可能であることが示唆された。(2)精密小型堆肥化装置を用いて、様々な堆肥材料による堆肥化での温室効果ガス(N2O, CH4)ならびに悪臭のNH3を連続的に測定した結果、高肥料成分バランス調整型堆肥の製造は、一般的な堆肥製造と比較して環境負荷物質の排出量を著しく増加させることなく、肥料成分濃度を増加させることが可能であることが示された(窒素-リン酸-カリウムが4.6-7.4-4.1 %-dm)。加えて、成分調整型堆肥の製造効率(窒素利用率)も他の堆肥製造とほぼ同程度であり、リン酸およびカリウムについては高い有効利用率であることが明らかとなった。以上のようにH27年度は研究実施計画に基づき、順調に研究が進められている。 さらに平成27年度では、平成28年度に実施計画の「作物栽培試験および施用効果の解明」に一部着手しており、人工気象器等を用いてコマツナなどへの高肥料成分バランス調整型堆肥施用による生育効果や施用効果の検証を進めている。 以上のように、H27年度の研究実施計画に基づき研究が遂行されており、さらに平成28年度の研究実施計画に一部着手しているなど、当初の計画以上に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究推進計画は以下の2点である。1点目は、高肥料成分バランス調整型堆肥施用による作物栽培試験および施用効果の解明である。この研究課題では、フィールドや人工気象器を用いた栽培試験を実施し、高肥料成分バランス調整型堆肥および一般的な堆肥さらには化学肥料施用との比較検証を行う。これによって、肥料の違いによる作物への生育や施用効果が明らかとなり、高肥料成分バランス調整型堆肥の優位性の有無が明らかとなる。2点目は、堆肥を施用した土壌から発生する環境負荷物質の排出量を明らかにすることである。高肥料成分バランス調整型堆肥や一般的な堆肥を土壌に施用し、その土壌から発生する温室効果ガス(CO2, N2O, CH4)やNH3の排出量を追跡し、肥料成分の移動量などを明らかにする。この解明によって、堆肥製造時および土壌施用後の環境負荷物質の収支解析が可能となり、平成29年度研究実施予定の環境影響評価の基礎データと成り得る。 以上、平成28年度は以上の2研究課題を通して、高肥料成分バランス調整型堆肥の施用効果と土壌施用後の環境不可物資の収支を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
平成27年度の使用額は概ね予定通りであったが、当初計画より若干消耗品費が安く済み残額が生じた。平成27年度の研究実施計画は順調に進行していたため、残額を次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(18,578円)については、消耗品(栽培試験用の種や苗)の一部として使用予定である。
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