2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K00640
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
大山 秀子 立教大学, 理学部, 教授 (60356673)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポリ乳酸 / ブレンド / 加水分解 / フィルム / 多孔質体 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2015年度は、計画通り、2種類の分解促進剤、ポリ(アスパラ銀酸-co-L乳酸)(PAL)とポリ(リンゴ酸-co-L乳酸)(PML)共重合体(両共重合体の乳酸コモノマー含量は91モル%)をポリ(L乳酸)(PLLA)に少量添加し、100/0~80/20重量比の範囲でブレンドを調製した。得られた試料を透過型電子顕微鏡(TEM)にてモルフォロジーを観察をしたところ、PLLA/PALは非相溶でPALの分散相が観察されたが、PLLA/PMLは分散相が観察されなかった。 次に空気中(25℃、60% RH)にブレンドフィルムを放置し、加水分解に対する安定性を調べたところ、PALやPMLを添加してもフィルムは加水分解を生じることはなかった。しかし、40℃、pH7.4の緩衝液に浸漬すると、PLLAの加水分解が劇的に促進することが明らかとなった。たとえば、中性下で20重量%の分解促進剤を添加したPLLAブレンドで比較すると、PLLA/PALはPLLA単体より加水分解速度が15倍、PLLA/PMLは34倍にも増加した。酸性下、アルカリ下での分解の検討ではアルカリ領域で分解が著しく促進することが分かった。これまでポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ε-カプロラクトン)、シリカらをPLLAに添加するとPLLAの分解が促進するとの報告があるが、本研究で用いたPALとPML、そしてそれらの分解生成物は生体内で用いても安全であり、さらに分解促進能も優れている。このようにPLLAの分解速度を添加量により自在に操作できるので、DDSのような薬剤や再生医療にも有効なバイオマテリアルとして期待できる。 さらに、当初の計画には含まれていなかったPLLA/PAL、PLLA/PMLから成る多孔質材料を熱誘起相分離の現象を利用して創出し、特許を出願した。多孔質体はスキャフォールドのような用途にも有望である。得られた成果をさらにまとめて国内優先権主張を利用した出願を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分解試験には時間を要するので、初年度から結果を出すのはなかなか大変であろうと想像していたが、分解試験の分析は順調に進んでいる。当初予定していなかった多孔質体での実験も加わり、より多角的にPLLA/PAL,PLLA/PMLブレンドの分解挙動を検討する素地ができつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果よりPLLA/PAL,PLLA/PMLブレンドフィルムの40℃、pH7.4での分解挙動を1つの論文としてまとめる。さらにPLLA/PAL,PLLA/PMLの多孔質体の分解挙動の結果を国内優先権主張を利用して出願する。 2016年度からは予定通り、1軸延伸フィルムを作成し、分子配向がPLLA/PALとPLLA/PMLブレンドフィルムの加水分解挙動に及ぼす影響を検討する。
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Causes of Carryover |
実験は順調であるが、次年度、外部での機器使用料(分析、延伸装置使用料など)が予定より多く派生する可能性があるために、2015年度は予算を使い切らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度の繰越額と合わせて基本的には計画書通りに研究費を使用し、実験を進める。
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