2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K00640
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
大山 秀子 立教大学, 理学部, 教授 (60356673)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポリ乳酸 / 加水分解 / 分解促進剤 / ポリマーブレンド |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度はポリ(L乳酸)(PLLA)/ポリ(L乳酸ーリンゴ酸)(PML)、PLLA/ポリ(L乳酸ーアスパラ銀酸)(PAL)のブレンドフィルムに一軸延伸を施し、延伸処理による構造変化、機械特性と加水分解挙動(40℃、pH7.4)への影響をPLLA単体フィルムと比較しながら検討した。その結果、以下のことが明らかとなった。 1. 延伸フィルムの結晶化と分子配向:一軸延伸処理により配向結晶化(PLLAのδ晶が生成)を生じた。しかしブレンドフィルムでは分解促進剤のPMLとPALがPLLA非晶部の配向を妨げ、PMLとPALが可塑剤として作用することが分かった。 2. 延伸フィルムの機械特性:延伸処理により延伸方向の引張強さと弾性率が上昇したが、PALとPMLの添加はその効果を抑制する傾向が見られた。延伸処理とPALとPML添加により、ブレンドフィルムの破断伸度は上昇した。 3. 延伸フィルムの加水分解挙動: A. 加水分解初期:延伸倍率を変えても加水分解挙動に違いは認められなかった。しかし、熱処理を施したブレンドフィルムは加水分解により質量減少が加速した。これは高度に発達した結晶生成により分解促進剤(PALとPML)と酸触媒の効果を有するPLLA末端基が非晶部に局在化するようになり、非晶部の加水分解が加速したためと考えられる。B. 加水分解後期:加水分解時間が40~60日以降になると延伸倍率により加水分解挙動に違いが現れた。低延伸倍率のブレンドフィルムでは、PLLA非晶部だけでなく結晶部も加水分解による質量減少を生じた。しかし、高延伸倍率のブレンドフィルムでは結晶部だけでなく非晶部も加水分解をほとんど生じなかった。これは伸びきった非晶部の高分子鎖が発達した結晶の壁に守られたためと考えられる。
H28年度はブレンドフィルムのデータをまとめることにも注力し、4件の学会発表のみならず、学術論文3報の発表と特許出願を2件行った。さらに多孔質体の加水分解過程の検討も開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H28年度は延伸フィルムについての実験を行う予定であったが、特許出願、学会発表、論文発表まで行うことができた。多孔質体の実験も順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は①pHと塩濃度がPLLAブレンドフィルムの加水分解挙動に及ぼす影響と②PLLAブレンドの多孔質体の加水分解挙動についてデータをすべてとり切り、学会発表(2017年8月のアメリカ化学会年次大会にて発表予定)と論文をまとめる予定である。また、2件の特許出願も予定している。(それらの国際特許も出願予定である。)
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Causes of Carryover |
アメリカ化学会年次大会(Washington DC, USA)で発表するための旅費・参加費などを確保した。 また、他大学で熱誘起相分離過程を光散乱測定にて追跡し、多孔質体の生成するメカニズムも解明する予定である。これらのための費用も確保した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカ化学会年次大会に参加する費用、新たに測定を始める光散乱の実験やその他の消耗品(ゲル浸透クロマトグラフィーのカラムなど)の購入に使用する予定である。
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