2015 Fiscal Year Research-status Report
フロート型バイオリアクターによる藍藻と光合成細菌による水素生産
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15K00642
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
井上 和仁 神奈川大学, 理学部, 教授 (20221088)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水素生産 / 光合成 / バイオリアクター |
Outline of Annual Research Achievements |
水素低透過性プラスチック素材を用いてバッグ状に加工し、小規模のフロート型バイオリアクターを試作した。実際にバッグ内部に藍藻を入れ、硫酸マグネシウムで比重を調整した模擬海水を入れた大型水槽に浮かべ、模擬太陽光照射装置により光照射し蓄積する水素量を調べた。照射する24時間当たりの積算光量を同等にし、約12時間の明暗周期で照射する光の変動パターンを矩形波、正弦波と変えて培養したところ、屋外を再現した正弦波に近い照射パターンのほうが水素生産性が約3倍高くなる結果を得た。 藍藻の水素生産性を高める目的で、藍藻Nostoc sp. PCC 7120において通常のモリブデン(Mo)を活性部位の中心金属に持つMo型ニトロゲナーゼの構造遺伝子nifDHKの大部分を欠失させた株に、中心金属がバナジウム(V)に置き換わっているV型ニトロゲナーゼの構造遺伝子を導入した株の作成に着手した。窒素源を含まず、Vを添加した寒天培地を用いてスクリーニングの条件を検討した。高濃度のV存在下では藍藻は生育しないが、低濃度をVを含む培地上に窒素固定能を持つ株が生育した。 紅色光合成細菌Rubrivivax gelatinosus strain RL2株の取り込み型ヒドロゲナーゼHupの構造遺伝子hupLを破壊した株を作成した。培地組成を検討し、水素の生産活性が親株よりも優位に上昇する結果が得られた。R. gelatinosusにおいてもヒドロゲナーゼHupは水素生産よりも、むしろ、ニトロゲナーゼの反応により生じる水素の再吸収を担っていると考えられる結果を得た。しかし、R. gelatinosusにおけるHupの破壊による水素生産の上昇は藍藻NostocやAnabaenaほどは高くないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している。水素低透過性プラスチックバッグを用いて試作した小型のフロート型バイオリアクター内部に実際に藍藻を入れて培養し、内部に水素が蓄積することを確認できた。V型ニトロゲナーゼを発現していると示唆される藍藻株を作成できた。取り込み型ヒドロゲナーゼHupを破壊した紅色硫黄細菌を作成できた。ニトロゲナーゼを利用した水素生産システム構築のための基礎的知見が得られた。以上の観点から概ね研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
藍藻のV型ニトロゲナーゼ発現株についてはV型ニトロゲナーゼの発現を転写レベル、細胞レベルで調べる。V型ニトロゲナーゼの発現レベルと水素生産性を明らかにする必要がある。藍藻のヘテロシスト形成頻度を変えた改良株やアンテナ削減株の作成を進め、水素生産性についての研究を進める。紅色光合成細菌は複雑な代謝経路を持っているので、有機酸やアミノ酸等の培養液の組成や気相組成などの検討により光エネルギーが優先的に水素生産に振り向けられる条件を検討する。水素低透過性プラスチックバッグ素材の性能について検討し、耐久性、水素蓄積性、内部に入れる生物との親和性、加工性などを検討する。バイオリアクターの形状の改良も行い、紅色光合成細菌と藍藻のどちらにも対応したフロート型バイオリアクターの開発を進める。
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Causes of Carryover |
申請段階では水素生産の光エネルギー変換効率を求める目的でソーラーシュミレーターの購入費用を計上した。本装置はソーラ ーパネルや光触媒の研究においても光エネルギー変換効率を測定する光源として用いられている。しかし、本研究で試作した小型バイオリアクターの受光面積(約500cm2)や長期間に渡る照射(12hの明暗周期で数日断続照射)、日周リズムの再現など、必ずしも当該装置は本研究のための性能を満たしていないことが判った。そのため当該装置の購入を中止し、神奈川大学に設置してある模擬太陽光照射装置で代替することにした。次年度使用額は模擬太陽光照射装置の稼働時間の延長に伴い光源であるグロセラランプ(年間20個)の購入にあてる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
グロセラランプ1灯(@35,000円)を順次交換し、年間20本の交換を予定している。光源の交換と合わせて必要となる関連部品の交換も含めて次年度使用額で賄う。翌年度分として請求した助成金は、当初の計画通り執行する。
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