2016 Fiscal Year Research-status Report
フロート型バイオリアクターによる藍藻と光合成細菌による水素生産
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15K00642
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
井上 和仁 神奈川大学, 理学部, 教授 (20221088)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 再生可能エネルギー / 光合成 / 水素 / シアノバクテリア / 光合成細菌 / 太陽光 / バイオリアクター |
Outline of Annual Research Achievements |
藍藻や植物のような酸素発生型光合成を行う生物は光化学系Iおよび光化学系IIと呼ばれる二つのタイプの光化学反応中心を持っている。これら二つの光化学系は反応中心複合体の主要な光を補足する色素としてクロロフィル(Chl)aを使用し、400 ~700 nmの波長領域の可視光を利用することができる。太陽光のうち、この波長領域に該当する部分は光合成有効放射(Photosynthetically active radiation、PAR)として知られ、地球表面が受ける太陽光エネルギー全体の45%を占める。そして、残りの55%の多くは近赤外光が占めている。Chl aを持つ光合成生物は、近赤外光の大部分を利用できないが、紅色光合成細菌は主要な光合成色素としてバクテリオクロロフィル(BChl)aを持ち、400 ~900 nm付近の波長領域の光を光合成に利用することができる。今年度は、まず、紅色光合成細菌Rubrivivax gelatinosusの取り込み型ヒドロゲナーゼHupを不活化した株を作成し、破壊株の水素生産性が向上することを確認した。次に、二層のバイオリアクターの上層に藍藻Anabaena sp. PCC 7120ΔHup株を、下層に紅色光合成細菌R. gelatinosusΔHup株を入れ、一定量の光量で白熱灯照射した。上層や下層で培養する藍藻の培養濃度や、上層と下層で培養する株の組み合わせなどを変えて、上層および下層から発生する水素量を調べた。その結果、単位面積当たりの水素生産量は上層に藍藻、下層に紅色光合成細菌を培養した場合に、光エネルギーの利用効率が有意に向上することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に進展している。取り込み型ヒドロゲナーゼHupを破壊した紅色光合成細菌の作成を行い、の水素生産性や水素生産に影響する要因の解析を行った。水素低透過性プラスチックバッグを用いて試作した小型フロート型バイオリアクター内部に紅色光合成細菌を入れて培養し水素の蓄積が起こることを確認した。バイオリアクターを二層化し、上部に藍藻、下部に紅色光合成細菌を入れて培養し、単位面積当たりの水素生産量は上層に藍藻、下層に紅色光合成細菌を培養した場合に、光エネルギーの利用効率が有意に向上することが確認された。以上の観点から研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ニトロゲナーゼの活性部位がバナジウム、Feのみで構成されているタイプに置き換えた株の作成を継続中であり、スクリーニングを進める。これらの代替ニトロゲナーゼ発現株やヘテロシスト形成頻度を変えた藍藻と水素生産性を高めた紅色光合成細菌を培養できる多層型バイオリアクターに入れ、模擬太陽光照射システムの下に模擬海水(硫酸マグネシウムで比重を調整)を入れた大型水槽(水温制御装置付き)を設置し、その上にフロート型バイオリアクターを浮かべ、屋外をシュミレートした環境条件下での水素生産性を調べる。
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Causes of Carryover |
当初、購入を予定していたソーラーシュミレーターは24時間の明暗差の日周リズムを出すことが困難だったので、神奈川大学に設置されている太陽光模擬照射装置を代用して行ったため。当該機種を購入せず、代替機種を運転するための消耗品等に振り替えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度では、研究の総まとめを行い、論文校閲料、学会発表等の経費に充てる。
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