2016 Fiscal Year Research-status Report
高耐塵性・低環境負荷な低回転ボルテックス水車の動作解析と設計指針の開発
Project/Area Number |
15K00643
|
Research Institution | Toyama University of International Studies |
Principal Investigator |
上坂 博亨 富山国際大学, 現代社会学部, 教授(移行) (50329364)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 慎二 富山県立大学, 工学部, 教授 (30337878)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ボルテックス水車 / 渦水流 / 数値シミュレーション / ゴミ流入 / 設置コスト / 魚道 |
Outline of Annual Research Achievements |
低回転ボルテックス水車の動作機序を明らかにするために,円筒形の水車容器内部の渦水流の水面形状と渦内部の流速分布を計測し,その特徴を明らかにした。物差しにて水深を計測した結果,水面形状は外周部から中心部にむかって上に凸の緩やかな曲線を示すすり鉢状であることが確認された。また渦中心と流出口中心とは,流入水の影響を受けて偏差が生じることが確認された。3次元電磁流速計を用いて渦内部の部分流速を,XYZ方向の速度成分に分けて測定した。その結果,水平速度(XYの合成速度)は周辺から中心に向かって上昇し,流出口近傍で急速に速度を失うが,水平速度(Z方向)には大きな変化が見られなかった。渦水流にランナーブレードを挿入して発電実験を実施した。ブレード枚数を3枚,4枚,6枚と増加することで発電出力の増加が確認された。またブレードを25度程度前傾する事でさらに出力増加が得られる可能性が示された。 オープンソースCFDソフトウェアOpenFOAMを利用し,運動量輸送方程式と液相率輸送式を解くことで空気と水の運動を求めるVOF法を採用することで,低回転ボルテックス水車の機序解明および効率向上に必要な水流,気流,水面変形を再現する数値シミュレーションモデル開発を試みた。その結果,ランナーに発生するトルクはブレード前後面の圧力の積算値として得られる事が数値シミュレーションにより示された。また渦水流はランナーブレードの周囲から中心に向かって流れ込み,その際にブレードに後方から作用してブレードを前方に押し出すとともに向きを変え,一部が中心の排水口から流出することが数値シミュレーションから予測された。この時,中心の排水口近傍では下向きの速度ベクトルが高くなり,この流れはブレードに作用することなく流下する。この無効水流を利用する事で水車効率が高くなる可能性が見出され,ブレードの前傾による出力増加との関連が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の数値シミュレーションにおいてはまず、水車容器内で発生させる渦水流の状態を数値シミュレーションで再現する必要がある。ブレード非設置状態で低回転ボルテックス水車容器内の水流を調査すると、容器側面の一箇所から流入し,容器底面1箇所から流出する水流によって形成される渦構造が,強制渦と自由渦との組合わせとして表現されるランキン渦モデルで近似できる可能性が明らかとなった。流出口付近では,速度は回転中心からの半径に比例して増加する。しかし,速度が極大値を示した後は,半径に逆比例して減少する。この極大速度をとる半径をコア半径と称する。コア半径は,水車ブレードの最適長さを検討する上で重要なパラメータと考えられる。現時点ではまだ完全な渦水流の再現には至っていないが乱流モデルの調整によって問題に取り組んでいる。 実験用ボルテックス水車においてランナーブレードの枚数、サイズ、取り付け角度を変化させることで発電出力に影響を与えることが明らかとなった。実験条件下で最も効率よく発電したケースにおいて効率を計測したところ、水車の総合効率は70.5%と推定され、大気開放型の重力水車としては十分な効率が得られる可能性が示唆された。これらの作用機序について明らかにするためには、水車の効率向上のための条件を詳細に解明するために、水車ブレードのない状態で水流の数値シミュレーションが必須である。現在までに実験データと詳細な比較を実施しながら,シミュレーションモデルの改善について検討を行っている。 乱流モデルの選択が予測精度に与える影響について検討した。乱流モデルをk-εモデルからk-ω SST モデルに変更することで,液面形状ならびに速度分布形状の予測形状が向上することを明らかにした。また、非定常解析に伴う大量のデータを効率的に処理するための自動処理手法について検討し,作業効率の向上に繋げた。
|
Strategy for Future Research Activity |
低回転ボルテックス水車の設計にシミュレーションを役立てるためには,解析精度のさらなる向上が求められる。精度向上の要因となるメッシュ構成について,その影響を明確にして,現実的な計算時間内に高い計算精度を得られるメッシュを完成する。メッシュ構成については,気相部でのメッシュ粗大化・円筒容器表面に沿ったメッシュ形状の採用・主となる流れ方向を加味したメッシュ配置・ブレード近傍での微細化・液面付近の微細化などを実施し,その効果を調べる。はく離と再付着を伴う流れに強いとされる乱流モデルを試用し,安定性・計算速度・精度への影響を調査する。 これまでの知見を総合したシミュレーションモデルによる解析を実施し,低回転ボルテックス水車のエネルギー変換機序を解明する。
|
Causes of Carryover |
①水車実験のためのブレード製作費を予定していたが、数値シミュレーションによって実験のモデルケースが削減されたことと、シミュレーションの研究進度が予定より若干遅れたことでブレード製作の次年度持ち越しが発生したため、当該年度の費用が縮減した。 ②シミュレーションデータの保存形式等を見直し,計算機運用の効率化を図った。これにより,データ保存に必要な記録媒体(大容量ハードディスク等)の使用量削減が可能となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
①水車実験費用として次年度に約150千円を持ち越し実行の予定。 ②記憶媒体などの消耗品で削減した費用については、最終年度である次年度に学会発表を予定以上に計画しており旅費に流用して効果的に使用する予定。
|
Research Products
(5 results)