2016 Fiscal Year Research-status Report
災害時におけるトイレ機能確保のための事業継続計画とその実践に関する研究
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15K00664
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
岡山 朋子 大正大学, 人間学部, 准教授 (20418734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 修久 名古屋大学, 減災連携研究センター, 准教授 (00399619)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 災害 / トイレ / し尿処理 / 避難所 / 事業継続計画・BCP / 災害廃棄物処理計画 / 地域防災計画 / 上下水道 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、当初予定では、災害時において停電によって水洗トイレが長期間使えなくなる状況への対応として、発災直後からトイレ(つまり人の排泄)およびし尿処理が継続的に実施できるよう、トイレ機能におけるBCPを試案し、それに関するワークショップを実施することになっていた。また、前年度に抽出された課題より、停電時でも使用できる地域の再生可能エネルギーを利用した災害トイレの実証の検討を行うことになっていた。 しかしながら、平成28年4月に熊本県を中心に熊本地震が発生したことから、当初予定を一部変更して、熊本地震の被災地における災害時トイレの状況を調査するためアンケート調査を加えて実施した。 アンケート調査は、益城町と熊本市を中心とした仮設住宅において、合計1400通の調査票を配布し、234人の被災者から回答を得た(有効回答率17%)。さらに、災害廃棄物が発生した熊本県内の31自治体に、仮設トイレの調達に関するアンケート調査を実施し、14自治体から回答を得た(有効回答率45%)。 報道においては東日本大震災時同様、特に女性が仮設トイレの使用を避けるために水分摂取を少なくするため、健康被害が起こることが伝えられたが、調査結果からは仮設トイレ使用の問題点において特に男女間の差異が現れなかった。自治体における仮設トイレの調達については、自治体が自ら行わず、熊本県環境整備事業協同組合が調達・配置・し尿処理を一括して行ったことがわかった。被災者および自治体のいずれにおいても、東日本大震災時に行った同様の調査結果とは異なっていることがわかった。 また、トイレおよびし尿処理は、水道事業とも大きく重なる。そこで災害時の水道事業体の事業継続マネジメントにおける現状と課題を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、当初予定では、災害時において停電によって水洗トイレが長期間使えなくなる状況への対応として、発災直後からトイレ(つまり人の排泄)およびし尿処理が継続的に実施できるよう、トイレ機能におけるBCPを試案し、そのワークショップを実施することになっていた。あわせて、平成27年度の実績より、災害時の避難所のトイレBCPの試案がだされたが、そのためには電力を地域の再生可能エネルギーから調達する必要があるという新たな課題が抽出された。そのため、山形県長井市で、災害トイレの実証を行うための検討を行うことになった。 平成28年4月に熊本県を中心に熊本地震が発生したことから、当初予定に加えて、熊本地震の被災地における災害時トイレの状況を調査するため、アンケート調査を実施した。制度面の検証と課題の抽出を、この調査結果を踏まえて行うこととしたため、とりまとめがやや遅れている(平成29年度に継続されている)。また、同様に、災害トイレのBCPを検討するにあたっても、平成27年度にまとめた「学校(避難所)におけるトイレ対応の試案」に、現時点においては新たなものが加わっておらず、また、大学での実際の避難訓練につなげることも困難であった。そのためワークショップの開催は保留した。次年度の課題となっている。 山形県長井市における災害トイレの実装については、別プロジェクトの構築を行いながら推進している。研究費獲得には至っていないが、概ね計画通りに進めている。また、水道事業者を対象とした水道事業のBCPに関する調査研究も、米国とのBCP策定状況の比較とともに、予定通り進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(平成29年度)においては、引き続き熊本地震における避難所のトイレ問題とし尿処理の実態について、現地調査および関係者へのヒアリング調査を実施する。これより、東日本大震災との災害トイレの実態や避難所におけるトイレ問題、仮設トイレの調達設置・し尿処理の実態を明らかにし、両災害時のトイレ問題と対応の比較を行うことで、一般化された課題に対応するための災害トイレのBCPを構築する。 また、水道事業のBCPと連携した、上下水道・飲料生活用水・し尿処理のトータルの水事業BCPを構築する。具体的には、水道事業のBCPにおける水需用量にトイレの水洗や手洗いの水を含めた場合の給水フローの考え方、水道管の早期復旧を目指す間のトイレに関する水使用(し尿を固化する場合は基本的に水を使用しない)について検討し、トイレBCPに加える。この結果を、災害廃棄物処理基本計画を策定する自治体に提案するとともに、機会が得られれば、自治体を対象とした災害廃棄物処理ワークショップの一環として実施する。 なお、本年度は国際会議・国内学会への発表、文献にまとめるといった研究成果の公開も目指す。
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Causes of Carryover |
平成28年4月に熊本地震が起こり、熊本県における被災者アンケート調査ならびに被災自治体を対象とした仮設トイレ調達とし尿処理に関するアンケート調査を実施する必要が生じた。そのため、平成29年度予算から繰り上げて(前倒して)上記調査に充てた。調査が終了した際、その残金が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の旅費として使用する。
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