2015 Fiscal Year Research-status Report
地域再生に資する環境色彩デザイン手法-日本特有の環境色彩と歴史的変遷を考慮して-
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15K00677
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 早里 筑波大学, 芸術系, 准教授 (90300029)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 色彩 / 屋外広告 / 環境デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
景観法が制定されて以降、我が国における景観団体数は増加の一途であり一見進展しているようであるが、景観色彩の誘導方法は数値で彩度の上限を決めるにとどまることが多く、画一的な傾向にあり、地方の歴史・文化性、住民の受容を考慮するまでに至っていない。本研究は景観法の趣旨である地域再生を目論み、日本の景観を色彩から捉えた「環境色彩」を中長期的に改良する手法を開発することを目的としている。平成27年度は以下の研究を行った。 1.歴史性アプローチ:歴史的町並みに見合う色彩誘導方法の検討を行った。屋外広告を対象とし、その大きさと色彩の許容度に着目し、被験者実験を行った結果、大きさと色相・明度・彩度の許容値を得た。具体的には、日本の京都と中国の周庄の街並みそれぞれについて、一つの建物の壁面広告の面積や色彩を変化したものをシミュレートした画像を作成し、被験者80名に印象評価実験を行った。刺激枚数は各街並み26枚である。この結果、色相R系であれば彩度6以下が外壁に対する面積10%まで許容できるが、一方で、G系やP系は彩度3、面積5%までが許容できることを明らかにした。 2.現状分析アプローチ、諸外国先進事例アプローチ:国内外の研究者と各都市の環境色彩に関する情報交換を行い、各地域の色彩計画の特徴を把握した。また、これらの事例をもとに、実際に学生宿舎や教育施設の色彩計画に応用した。 これらの研究成果を、国際色彩学会大会や日本建築学会で発表し、さらに日本デザイン学会、日本建築学会の次年度の年次大会などに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歴史性アプローチについて、当初計画どおり現地調査を行った上で、平成29年に行う予定であったシミュレーション画像を用いた被験者実験まで行い、一定の条件付きではあるものの、歴史的町並みにおける屋外広告の調和する色彩や大きさの結果を得ることができ、よく進展しているため。 また、現状分析アプローチ、諸外国先進事例アプローチについても、国際学会で研究成果を発表し、国外の研究者と意見交換をしたことによって、先進事例の情報を得ることができたなどおおむね予定どおりに進展しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に引き続き、3つのアプローチにより調査と実験を行う。 1.歴史的アプローチについては、歴史的町並みにおける屋外広告について、色彩と大きさに加えプロポーションも検討項目に加え被験者実験を行い、調和する条件を明らかにする。 2.現状分析アプローチについては、国内における環境色彩の誘導方法について分析を進める。 3.諸外国の先進事例アプローチについては、平成27年度にテロ事件により行えなかった現地調査を含め、安全に配慮して調査を行う予定である。 以上の結果をまとめ、成果を学会で発表する。
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Causes of Carryover |
諸外国先進事例アプローチで予定していた欧州における色彩事例の調査を、フランスパリのテロ事件により見合わせたため使用額の変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は欧州の安全情報を考慮しつつ、色彩事例の調査を実施する。
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