2016 Fiscal Year Research-status Report
肌色誘導現象とコミュニケーションツールとしての化粧
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15K00678
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
桐谷 佳惠 千葉大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00292665)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 色知覚 / 顔 / 化粧 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで,アイシャドウの色彩に肌色が同化して見られる現象を確認したが,それが顔特有の現象であるか,また発生範囲などは確認できていなかった。今年度は,これらの検証実験を中心に行った。 本実験では,PC上に呈示される平均顔に,赤・橙・貴・緑・青のアイシャドウを塗布し,アイシャドウなしの顔と合わせた6刺激を標準刺激とした。比較刺激は,目の部分のみ,頬部分のみ,顔全体の3パターンを用意し,いずれもアイシャドウなしの状態で,顔色を赤みを増す方向と減らす方向に段階的にそれぞれ用意した。このとき,赤み増減は刺激のa*値のみを増大・減少させるようにし,黄みは変化させないようにした。実験参加者は,標準刺激と同じ顔色に見えるよう,比較刺激の赤みを操作した。さらに,最も美しく見える肌色を調整した。最後に,顔刺激のどこを見て判断していたか,回答した。同様の実験は,顔刺激ではなく,肌色の長方形に色線とぼかしを入れた図形刺激を用いて,行われた。 その結果,赤や橙のアイシャドウで肌色は赤みを増し,貴と緑で赤みを失って見えるというこれまでと同様の結果が確認された。これは,図形刺激では起こらなかったので,アイシャドウによる肌色誘導現象は顔特有の現象である可能性が高まった。参加者の内観報告では,頬の部分を見て判断したという回答が最も多かった。しかし,測定結果からは目の周りの刺激のときに上記色の知覚的誘導が起こりやすいことも示された。 上記以外の実験としては,評定者の男女差の影響を確認した。評定者が女性であっても,男性であっても,アイシャドウによる肌色誘導現象は起きた。しかし,評定者が男性の場合,「化粧の良し悪し」や「美醜」という項目は,判断しづらいことが示された。つまり,男女差は知覚現象ではなく,評価レベルで起きていた。 また本年度は,昨年度までの結果を1本の研究論文と,2回の国際学会で発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで確認してきた化粧による肌色誘導現象は,一種の同化効果である。しかし,配色等刺激構成を考えると,従来確認されている色彩知覚においては対比効果として現れてもおかしくないものもある。そこで,化粧による肌色誘導現象は,顔特有のものである可能性があった。それを今年度は証明する実験を行えたことで,本研究課題の根幹をなす実験を終えたともいえる。 その一方で,実験刺激作成者のリクルートにとまどり,確認実験がアイシャドウ刺激のみに留まった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,化粧による肌色誘導現象が顔特有の現象であることをさらに示すため,実験を重ねることになる。刺激作成者のリクルートが,最大の課題である。今年度は,実験参加者への謝礼のみならず,実験補助者も謝礼を支払って確保する必要がある。
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Causes of Carryover |
今年度は,英文論文校正が何度か必要となり,また年度末にかけてもそのような事態となり,多少予算を残しておく必要があった。最終的に,最後に必要となった金額が少額であり,上記の金額が残った形となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,実験参加者への謝金,実験補助者への謝礼,英文論文校正に特に費用がかかることが見込まれる。その一部として,使用する計画である。
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