2015 Fiscal Year Research-status Report
景観における自転車通行環境のデザインに関する研究ー京都市の実証実験をベースにして
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15K00694
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
藤本 英子 京都市立芸術大学, 美術学部, 教授 (60336724)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自転車通行環境 / ピクトグラム / 景観 / デザインガイドライン / 色彩分析 / 京都の景観 |
Outline of Annual Research Achievements |
■現場調査実績 初年度である本年度は、国内で先進的に自転車通行環境を整備している都市における調査と共に、先進的な自転車政策を進めている欧州において、7カ国16都市の綿密な調査を行った。欧州での調査の内容は、数多い事例の現場写真と路面表記のサイズ調査及び色彩測定となっており、他に類をみないものとして、自転車関連業界での注目も高まっている。 ■京都市での通行環境の景観検証実績 京都市においては、既に自転車環境整備が進められている地点で、現場写真を活用した「デジタル画像色分析システム」により、現状の路面表記が景観上周辺との関係で、課題のない範囲に存在することを確認すると共に、視認性の面での課題があることも明らかにした。 ■京都市での社会実験とガイドライン策定に向けた研究実績 京都市が「京都市自転車等駐車対策協議会」のもとに平成27年度設置した「京都市自転車走行環境整備ガイドライン部会」の委員として参画する中で、具体的な自転車通行環境のデザインを進めていった。京都市と共に平成27年8月には、簡易実験を行い、自転車と自動車の視点から路面表記がどのように見えるか、矢羽根・自転車ピクト等の規格検討を行った。京都市の中心部に多い生活道路において、同8月京都市と共に現場簡易実験を行い、矢羽根・自転車ピクトの適正な間隔を検討した。また、国の「安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会」で検討中の矢羽根・自転車ピクトも視野に入れた中で、本研究者が京都市としてのオリジナルデザインを行った。平成28年1月~2月には、夜間視認性の検証実験の結果をもとに、白線の入れ方と素材を決定した。また、市内5路線において京都市と共に新たな矢羽根・自転車ピクトで実証実験を行い、150余名のアンンケート調査および8地点で路面表記設置前後の通行調査より、その効果分析データを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年度の研究計画に基づき下記にまとめる (1)国内における自転車通行環境デザイン調査/現段階で整備が比較的進んでいる国内の事例調査を進めた。 (2)海外における自転車通行環境デザイン調査/欧州7カ国(イギリス、ベルギー、オランダ、ドイツ、フランス、デンマーク、スウェーデン)16都市において行った自転車通行環境の調査は、予想を上回る現場のデータとして、サイズ、色彩測定資料が得られた。また、各国の自転車政策及び人々の自転車活用生活の実態、自転車教育の先進状況等、自転車に関する様々な情報も得ることができたことにより、今後のデータ分析への期待が高まっている。 (3)京都市内既存整備環境のデザイン調査と分析/京都市で既に自転車環境整備が進められている地点の現場写真を活用した「デジタル画像色分析システム」での分析を行い、学会での発表を行った。 京都市と共に、現在の路面表記デザインの見直しを、現場での簡易実験、夜間視認性の検証実験を通じて行い、新たな矢羽根・自転車ピクトという路面標記デザインを行った。そのデザインにより市内中心部での実証実験とそのデータ分析まで行うことができた。これは、28年度以降に予定していた内容であり、スムーズな研究推進ができた結果である。 (4)京都市で開催される「自転車利用環境向上会議」での問題提起/平成28年1月に実施された本会議において、景観の中で自転車通行環境の整備がどのように影響を及ぼしているのかについて、その路面標記色と周辺景観の色彩分析から問題提起を行った。また全国から参加した自転車関係の有識者による、市内現場での実証実験視察から意見聴取もできた。その他、NPO法人自転車活用推進研究会などで調査発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に基づき下記にまとめる (1)平成27年度調査地区の分析/平成27年度未調査の国内事例調査を進める。これまでの調査地区について、路面表記などのデザインと周辺景観との関係を明らかにすると共に、調査資料の充実している欧州について、さらに踏み込んだ分析を行い、自転車環境の日本との差を明らかにしていきたい。 (2)京都市自転車走行環境整備ガイドラインの検証/京都市で策定するガイドラインに基づき整備される現場について、周辺景観との関係性からの検証を行う。 (3)自転車通行環境のデザインガイドライン(冊子)の作成と研究成果の発信による普及啓発/国内外の調査分析と、京都市での現場分析をふまえ、自転車通行環境デザインガイドライン案を作成し、全国組織であるNPO自転車活用推進研究会および、毎年の自転車利用環境向上会議などを通じ、景観に配慮した質の高い自転車通行環境整備の重要性を全国に発信し、内容を精査しながらデザインガイドラインの最終版を仕上げ、内容の普及啓発を図る。 (4)2020年を見据えた公共空間デザインの課題分析/平成32年に予定されている東京オリンピックを見据えて、公共空間の国際化対応では様々な課題が考えられる。特に多くの来訪者が予想される京都市で、自転車通行環境整備も含めた、公共空間デザインにおける景観に配慮した国際化対応のデザイン課題を分析する。
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Causes of Carryover |
予定していた台湾での国際会議期間に、大学職務が重なり参加できなかったため、海外出張旅費支出が減少。また、京都市での実証実験と、その検証、分析のため、国内各地での調査が予定より少なく出張旅費支出が減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度調査できなかった国内各地での自転車走行環境調査を、平成28年度さらに進めるための交通費および、海外での会議への参加費としてあてる。
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