2015 Fiscal Year Research-status Report
「茶」のトランスフォーム~「関係性の美学」デザイン理論の探求
Project/Area Number |
15K00695
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
森野 彰人 京都市立芸術大学, 美術学部, 准教授 (30453088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤野 靖子 京都市立芸術大学, 美術学部, 教授 (50363966)
松井 紫朗 京都市立芸術大学, 美術学部, 教授 (60275188)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 茶 / 関係性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、今に残る「茶」に関わる空間、道具、歴史を調査対象とし、「茶」は、どのようにして、新しい文脈を形作りながら美的経験を誘発する装置として機能したか、それをヒト、モノ、コト、3つの相互的関係の中から新しい価値創出がどのように行われたか、所作と結びついた道具が、人と人、人とものをどのように関係づけ、新しい文脈を形作ることができたかについて様々な角度から検証した。栄西禅師によって日本にもたらされた「茶」のルーツを探り、仏教の伝来と人の往来がもたらす新しい価値の創造の検証するために、中国、天台山「国清寺」「万年寺」を11月に調査した。12月には宗教と建築空間の関係性、身体と空間の関係性の調査として、仏教、ヒンズー教が混在した建築空間であるカンボジアのアンコールワットを調査した。水を利用し、水平、垂直の関係を構築し、永遠性を演出した回廊が、ヒトの体性知覚領域へどのような刺激入力するを調査した。これは生を実感するための脳内への刺激入力、受容器への負荷を、設えと既定の所作によって計画されたものであり、茶室、所作に施されたシステムと同様のものであると検証できた。3月には九州の高取、鍋島、唐津、小倉、筥崎を訪れ、日常性を美的経験へと結びつけるモデルと歴史的調査した。明治期に出版された「観古図説」江戸期に出版された「茶道具図解」からの制作は日常性を美的経験へと結びつけるモデルの創出を調査、検証しました。これらの調査、研究は、「茶」を、食事をし、茶を味わうという、人と人の出会いの場で起きる日常的な行為を、濃厚で特別な美的経験へと変換することに自覚的に取り組む実験に結びつく事が予想できます。また、実践として京都私立芸術大学にある美的経験装置に手を加え、新しい道具を制作し、研究分担者である松井紫郎が行っている「手に取る宇宙」を題材にした新しい美的体験を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、今に残る「茶」に関わる空間、道具、歴史を調査対象とし、「茶」は、どのようにして、新しい文脈を形作りながら美的経験を誘発する装置として機能したか、それをヒト、モノ、コト、3つの相互的関係の中から新しい価値創出がどのように行われたか、所作と結びついた道具が、人と人、人とものをどのように関係づけ、新しい文脈を形作ることができたかについて様々な角度から検証出来ました。特に、中国、カンボジア、九州の調査は①「ヒト」・ヒエラルキー、関係性、②「モノ」・道具、そして③「コト」・所作と関わる身体的知覚、という3つの相互的関係の中から新しい価値創出がどのように行われたか、所作と結びついた道具が、人と人、人とものをどのように関係づけ、新しい文脈を形作ることができたかについての検証を大きく進展させた。また、研究分担者である松井紫郎が行っている「手に取る宇宙」を題材にした美的体験の実施は、オリジナルな視点からの「茶」へのアプローチ、「茶」が日常性を美的経験へと誘発する装置と捉え、そこにあるヒト、モノ、コトの相互で密な関係性の在り様を解明しようとする分析的な研究方法、現代への「茶」の適用と「「茶」のトランスフォーム」の実践として有効である事が確認でき、次年度へ繋がるものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
現代の生活様式、社会・文化的制度と照らし合わせながら「行為」「形」という形で抽出を行い、美的経験の為のさまざまなモデル、「「茶」のトランスフォーム」の実践にはいる。同時に、これの裏付けとなる「関係性の美学」デザイン理論を探求する。また、調査しきれていない茶室や道具の調査も行い・茶事における趣向と文脈の変・政治的状況と人間関係・茶事の目的と茶室の設えの変化・交易、貿易がもたらすモードの変化・生産技術(素材・成形・加飾)の変化・茶室空間の設えと身体的知覚の関係・茶室空間の変遷と所作の変化・裂と道具の関係・近代化と女性の進出による茶事の変化・道具と所作の関係をさらに検証していく。実践として美的体験装置を用いた様々な試行を行い、「「茶」のトランスフォーム」へつなげていく。
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Causes of Carryover |
計画していたCADデータ入力が実施できず、人件費がなかったこと、美的体験装置、モデル試作費としての消耗品費が安く実施できたこと。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実施できなかったCADデータ入力を行い、試作につなげる。美的体験モデル試作を計画以上に進展させるための消耗品費に当てる。
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