2016 Fiscal Year Research-status Report
伝統的建造物群保存地区のバッファー・ゾーン設定モデル
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15K00705
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| Research Institution | Osaka Institute of Technology |
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Principal Investigator |
田中 一成 大阪工業大学, 工学部, 教授 (10330789)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 眞 大阪工業大学, 工学部, 教授 (80116128)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | バッファー・ゾーン / 遺産 / レーザー測量 / GIS / 可視・不可視分析 / 伝統的建造物群保存地区 / 聴覚 / 嗅覚 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
歴史的あるいは文化的に優れた建築・構造物は，その位置や形状にさまざまなものがある。しかしこれらの多くは，実際には写真や映像で見るのとは異なった興ざめするような風景，周辺の騒音や臭いなどと隣接しており，我々のイメージとことなる環境に直面することも多い。
この研究では，これらの空間の保全・保存計画において，対象周辺の空間（緩衝空間：バッファー・ゾーン）の適正規模・範囲をみいだすため，その根拠となる指標をみいだそうとする。最終的には，適正なバッファー・ゾーンの計画や対象設定時に寄与するデータとその利用方法を提案しようとするものである。
これまで，対象地区とした紀伊半島に位置する熊野古道の周囲，特に世界遺産に指定されている範囲と重要伝統的建造物群保存地区に指定されている湯浅の街を対象に，視覚（風景），空間の大きさと開放性，色彩，音量，風と臭気について収集したデータにもとづいて遮断効果等を分析してきた。同時に，過去の災害時の被害記録等についても情報を収集してきている。これらのデータと現場測量調査等によって得られた現状との関係分析によって，バッファー・ゾーン設定のための指標と基準値を明らかにすると同時に，そのためのデータベース整備方法を見いだす。2016年度は，本調査を対象地区について行い，データ整備と指標の検討を行った。さらに，これをもとにしてバッファーゾーン・モデルの仮説的な設定を試行した。モデル化を行うにあたり，今年度は特に音量と臭気についての調査を行い，これまでのレーザー測量の成果との関係を分析した。
以上の結果，さまざまな形状をもつバッファー・ゾーンについて，その表現・モデル化手法が極めて重要な課題となり，既往研究や他分野・学会等の研究とあわせて検討を行うこととなった。現在は，３種類程度の表現方法によるバッファー・ゾーンの評価・図化の手法を検討中である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は，対象地区とした紀伊半島に位置する熊野古道における15地区程度，特に世界遺産に指定されている範囲と重要伝統的建造物群保存地区に指定されている湯浅の街を対象地区として，視覚（風景），空間の大きさと開放性，色彩，音量，風と匂いについて本調査を行いデータを収集した。また，これにもとづいて，現地地形等の物理的特徴との関係を分析している。
まず，2015年度行ったレーザー測量の成果をもとに，対象地区のひとつである和歌山県湯浅町（重要伝統的建造物群保存地区）について測定街路からの距離による分布を取り出して透過率を算出した。合わせて街区レベル，地区レベルの遮断効果を算出した。この結果をもとに，本調査では，音量と風量・臭気について測定を行い一定のデータを得た。
以上をもとに，街路とその奥に広がる街区レベルの遮断効果を算出し，都市内部でのバッファー・ゾーン設定のために必要なパラメータ取得を試みた。音量では一定の成果を得ているが，風量と関係する臭気の調査・分析では，十分な説明力を最終的に得ることができなかった。同様の調査分析について，世界遺産である熊野古道とそのまわりに位置する集落において実施している。ここでも，上記とほぼ同様の結果を得ている。
これまでの一連の研究成果と現地調査にもとづいて，データベースを部分については仮説的に構築している。これらデータをもとにしたバッファーについて，現在はその表現方法を既往研究や他分野の研究等をもとに検討を行っている。
なお，ここではＧＩＳデータを用いた分析手法について，研究分担者である吉川眞教授（大阪工業大学）との共同作業により実施している。また，データの表現方法について，研究分担者とともに多くの既往研究や学会での議論をもとにその内容を精査中である。
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| Strategy for Future Research Activity |
本研究の第３段階として，得られたデータについてその表現とバッファー・ゾーンに対する評価，比較，提案を行う。
これまで行ってきた調査・分析から，一連の研究で得たバッファー・ゾーン設定に寄与する変数を得たが，これにもとづいて，仮説的なＧＩＳデータベースの構築を行う。現地調査等により得た対象地区の根拠データにもとづいて，データ作成の裏づけに必要なパラメータを用い，データ化を試みる。根拠データの取得に際しては空間情報としてデータ形状の検討を行い，ＧＩＳ利用にあたっては研究分担者である吉川眞教授（大阪工業大学）との共同作業による検討を行う。
最終的には現在検討中のバッファー・ゾーン表現手法について提案を行い，成果等を学会等で発表し意見交換の後，論文化を行う。
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| Causes of Carryover |
調査・分析については概ね予定通り進行してきたが，データベースの構築について部分的に推定値とならざるをえなく，このために裏づけとなる調査とデータ検討にかかる費用が次年度へと繰越となった。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
対象地区に対する本調査にもとづいた基礎的なデータを取得してきたが，以降の本研究における基礎となるこの本調査における全ての分析について十分な結果を得ることができず（特に臭気），一部は仮説的に扱わざるを得なくなった。このため，裏づけ調査を部分的に行う予定である。また，新たなデータ作成を，研究協力者である吉川眞教授（大阪工業大学）と共同作業により検討すると同時に，他研究者，研究機関との情報交換を行う。最終的には予定どおり学会発表，論文作成ための費用等に対して使用する予定である。
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Research Products
(1 results)
