2015 Fiscal Year Research-status Report
自生的スポンテニアスデザインの事例収集及び発生要因と構造特性による類型化の研究
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15K00707
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
佐野 浩三 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (50258175)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神戸洋家具産業 / 自然発生的デザイン / 近代型地場産業 / デザインプロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究は、先の科学研究費助成課題(神戸家具の歴史と今日的可能性)から副次的に読み取れた自然発生的・自発的なデザイン事象「スポンテニアスデザイン」の特徴に注目し、同様の構図にある事例を収集・分析することで、今後の新たな研究の布石となる基礎資料を纏めることを目的とする。「神戸洋家具産業」のように人々の活動の現場から生まれたデザインは、我々の生活文化に大きな影響を残しながらも、無名性・匿名性からデザインの視点で学術的に取り上げられる機会が少なく研究の空白領域となっているケースが多い。また、スポンテニアスデザインは、今日支配的なマーケットインの制度的デザインに対置し、変化に柔軟な構造を生来的に保持している側面がある。先行研究が乏しく方法論も基礎的段階にあるが、デザイン研究の視野を広げる試みとして事例発掘に基づく発生要因と構造特性による類型化を目標とする。 研究の進め方は大きく二段階で構成され、まず、スポンテニアスデザインの典型例として自身が研究を継続してきた「神戸洋家具産業」と同様の周辺条件を満たし、発生要因と構造特性の比較検討が可能な対象事例を選定することが出発点であり最も重要な作業となる。次の段階は、仮説として得られたスポンテニアスデザインの発生要因と構造特性の類型に適合する現代の特徴的な事象をリストアップし、文献調査やフィールドワークによって仮説の補強を図ることになる。 2015年度に於いては、第一段階での「神戸洋家具産業」と同様の周辺条件を満たした比較対象事例の核となる産業を選定し、研究協力者を加えた体制を構築できたことが重要な成果である。また、基礎となる仮説に対応させる現代の萌芽的なスポンテニアスデザイン事例のリストアップも2016年度において研究協力者を加え具体的な調査を実施できる状況に至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画通りか、若しくは計画以上の進展が見られた。 文献調査資料の納品遅れのため、計画していたフィールドワークの一部を2016年度に先送りすることになったが、優先順位の高い対象に調査を集中することで「神戸用家具産業」と比較可能な主事例の選定が効率的に進展し、計画の方向性を確定する結果となった。 現代のスポンテニアスデザイン事例の候補となるリストアップ、スポンテニアスデザインに対置する制度的デザイン(インスティチューショナルデザイン)のプロセスの整理も並行して進めており、計画遂行上の特記すべき問題点は存在しない。
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Strategy for Future Research Activity |
第一段階での「神戸洋家具産業」の比較対象とする事例は、選定過程で事前に発生要因と構造特性の概略を分析しており、2016年度は具体的な資料収集や分析の実施が中心となる。その対象事例は研究の性格上、デザインの視点からの纏まった既往研究が乏しいことから、当該産業の情報が得られる関係づくりが必要となる。同様に、第二段階の現代における萌芽的なスポンテニアスデザインの事例収集においても、デザイナーの視点から現場の感覚を加味して産業界の現況を分析する必要がある。 以上のことから、より具体的で密度のある研究を実現するために、二名の協力者を加えた体制で研究を推進する。2016年度は、九州の震災の影響があるため、当初計画のフィールドワーク先の変更も状況に合わせて考慮しながら、収集した事例を分類し、発現/創出プロセスの固有条件の抽出、発現/創出の誘因分析、構造特性の推移の類型化を通じてスポンテニアスデザインの特徴とインスティチューショナルデザインとの関係を纏める作業に着手する。 研究協力者は、比較対象事例の段階では「琉球ガラス」のコレクター・研究者である河西大地氏、現代の萌芽的事例収集、制度的デザイン分析の領域では、プロダクトデザイナーでありブランディングに精通している寳角光伸氏(寳角デザイン代表、大学講師)に依頼済みで研究体制は準備できている。
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Causes of Carryover |
一部の文献資料の納品に5ヶ月を要したことで、事前調査としての文献調査後に計画していたフィールドワークを2016年度に先送りしたことによる旅費の差額が主たる理由である。また、聴き取り調査での謝金、文字起し等のアルバイト費用を予定していたが、データでの資料提供が得られたことや音声入力が可能になったため、物品費での対応となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
二名の研究協力者が得られたことで、2016年度は当初計画以上の進展が期待される。その経費として、研究協力者に係る旅費、謝金、資料収集費用等が新たに発生することが予測される。また、九州地方の震災の影響による調査計画の再調整は必要となるが、文献の納品遅れで先送りとなっている次年度使用額(B-A)に相当する調査は2016年度に実施するため必要となる経費である。
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