2016 Fiscal Year Research-status Report
共働き夫婦の夫の就業状況が妻の仕事と子育ての葛藤に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
15K00722
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
久保 桂子 千葉大学, 教育学部, 教授 (80234475)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 共働き夫婦 / 稼ぎ手役割意識 / 子育て役割意識 / ワーク・ライフ・バランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、2013年に行った質問紙調査を用いて分析し、以下の内容にまとめた。夫の就業状況は、夫の家事・育児参加に大きく影響する。夫の家事・育児への参加の度合いは、夫の家事・育児参加に対する妻の評価に肯定的に影響を与える。さらに、男性の育児参加を支持する妻の意識と妻の仕事から家庭生活への葛藤は、妻の評価に否定的な影響をもたらしている。そして、夫の家事・育児参加の度合いが低い2グループ間で、夫に対する評価の違いが明らかになった。 さらに、昨年度に引き続き、ワーク・ライフ・バランスについて、Hochschildの「タイム・バインド( 時間の板挟み)の状態」という考え方を用いながら、WLBの分析方法を検討し、試案を作成した。WLBの規準となる状態を設定し、労働時間8時間、休憩時間45分、通勤時間1時間で、合計9時間45分を収入生活時間とし、それ以外の時間が家庭と個人のために時間とした。さらに、タイム・バインドを解消するために各自が行っている戦略を検討し、戦略によっては、仕事から家庭への葛藤や、家庭から仕事への葛藤につながることを確認した。 また、男性の稼得と子育て役割の板挟み状態の葛藤について研究を進めた。分析には、2013年に行った質問紙調査の結果を用いた。男性の稼ぎ手役割意識の高低と、子育て役割意識の高低を組み合わせて4グループを作成し、妻の就業形態の正規・非正規別に確認すると、「稼ぎ手低・子育て高」意識のグループは、妻正規の夫で高い割合を示しており、妻非正規の夫では稼ぎ手意識の高いグループの占める割合が高い。仕事から家庭生活への葛藤は、「稼ぎ手高・子育て低」のグループで最も高い。子育て意識の高い夫のグループの場合、女性の就労を肯定的に捉える傾向にある。 稼ぎ手意識の高い夫のグループの場合、妻の男性稼ぎ手意識も高い傾向にあることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、これまでの調査結果をもとに理論的な整理を行い、「板挟み状態」について、時間と意識と両方の側面から研究を進めることが重要であることを確認した。また、夫の稼得役割意識には、妻の夫に対する稼得役割を期待する意識も影響を与えており、夫婦を組合せて分析することの重要性が確認できた。研究成果は、まず、「共働き夫婦における夫の家事・育児参加に対する妻の評価」というタイトルで『日本家政学会誌』第67巻8号に掲載した。そして「ワーク・ライフ・バランスの分析方法の検討」というタイトルで、『千葉大学教育学部研究紀要』第65巻(2017年3月)に掲載した。さらに、「共働き夫婦の夫の稼ぎ手役割意識と子育て役割意識」というタイトルで、日本家政学会第69回大会で口頭発表を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、夫の就業状況について、夫自身がどのようにワーク・ライフ・バランスを図ろうとしているのか、子育てや生活の価値をどの程度認識しているのか、生活を重視することは職場との関係で葛藤を高めるのかなど、生活の価値の置き方を確認しながら、共働き夫婦の家事・育児分担の在り方などを検討する。
|