2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K00732
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Research Institution | Atomi University |
Principal Investigator |
佐野 美智子 跡見学園女子大学, 観光コミュニティ学部, 教授 (90295949)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 消費アスピレーション / 豊かさ / 社会関係資本 / 消費者心理 / 消費態度モデル / 消費予測 / 消費者行動 / 消費マインド |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度研究は,消費生活に関するアスピレーション(より望ましい生活を手に入れようとする要求)について理解を深めるために,探索型の質的調査研究を行った。消費者が手に入れたいと望む生活の内容を明らかにし,それを手に入れようとする要求が,どのような消費態度や行動につながるのかを明らかにすることが目的である。アスピレーションと消費の関係について概念モデルを構築するために,個人に対する半構造化インタビューを行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTAと略記)の手法を用いて分析した。 分析の結果,消費者が手に入れたいと望む生活として,[安心した生活][身の丈の暮らし][充実した生活]という3つの概念を見出すことができた。これらを〈望む生活〉としてまとめる一方,[お金に困らないこと][好きに使える時間][人との関わり]という概念を〈豊かさ〉としてまとめた。〈豊かさ〉と〈望む生活〉は,社会関係資本である〈人のつながり〉とも相互関係にあり,〈生活設計〉や〈先行き見通し〉とともに,消費態度や行動を規定する。最終的に構築したモデルからは,次の2つの仮説を導出することができた。一つ目は,お金に困らないことを生活の基本要件とし,身の丈の安心な生活を望むアスピレーションは,家計を圧迫する二大費目である教育関係費と住宅関係費に備える消費態度につながること。二つ目は,人と関わり,好きに使える時間を持ち,充実した生活を望むアスピレーションは,旅行・レジャー・つきあいや,趣味・自己投資の消費につながること。これらの仮説を検証するために,平成28年度は質問紙調査を実施する予定である。 本研究では,実証的な手法によって〈望む生活〉〈豊かさ〉の内容を探索した。豊かさに関する論考は数多いが,データに基づく実証研究は少ない。今回,GTAを用いることで,深い内容の考察を実証的にできたことの意義は大きいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,精度の高い消費予測に資する消費者心理の側面を明らかにすることを目的としている。そのために,平成27年度は,(1)家計の収入と消費支出,消費者心理に関する時系列の集計データを利用したマクロレベルの消費分析,(2)問題探索型の質的調査(消費生活に関するアスピレーションを探る目的でインタビューを実施)によるミクロレベルの分析,この2つを計画した。このうち,(1)のマクロレベルの研究は当初の見込みよりやや遅れ気味だが,(2)のミクロレベルの研究は,インタビュー調査の実施,分析を終え,目的とした概念モデルの構築まで進めることができた。平成28年度は,当初計画通りに,モデルから導出した仮説を検証するための質問紙調査を行う。当初の研究計画を逸脱することなく,おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,当初計画通り,仮説検証のための質問紙調査をパネル設計で実施する。平成28年6月に本調査を行い,本調査の回答者に対して半年後に追跡調査を行う。 本調査終了時から追跡調査開始までの期間は,本調査で回収できたクロスセクションデータを利用した仮説検証を行う。分析の中心は,平成27年度の質的研究結果から導出した,〈望む生活〉〈豊かさ〉〈人のつながり〉など,消費アスピレーションを理解するための諸概念の構造を明らかにすることである。追跡調査終了後は,短期パネルの個票データを利用した分析を行う。消費者の心理と消費者が有する資源が,どのように消費支出行動を規定しているのかを明らかにする計画である。 平成29年度は,平成27年度に進捗が遅れ気味だったマクロレベルの分析結果をまとめ,ミクロレベルの分析結果(平成27年度の質的調査と平成28年度の量的調査に基づく)とともに,これからの消費社会に適合する新たな消費態度モデルの構築を目指す計画である。
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Causes of Carryover |
平成28年度実施予定の質問紙調査にかかる費用を見積もったところ,それなりの費用がかかると判断し,平成27年度直接経費の使い方を見直すことで必要な費用を捻出した。このため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度実施予定の質問紙調査費用に充当する。
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Research Products
(1 results)