2016 Fiscal Year Research-status Report
携帯型音楽プレーヤーによる無意識下の過大音刺激による蝸牛障害危険性の定量的評価
Project/Area Number |
15K00737
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
伊藤 麻美 順天堂大学, 医学部, 助手 (60384111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 卓二 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (10282097)
橋本 卓弥 東京理科大学, 工学部機械工学科, 講師 (60548163)
笠井 美里 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (70549279)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 過大音 / 蝸牛障害 / 騒音下 / 携帯音楽プレーヤー / 音楽聴取 / 無意識下 |
Outline of Annual Research Achievements |
携帯型音楽プレーヤーが主に使用される場所の一つである電車内の騒音環境を再現するための実験環境を構築した.防音室内に3チャンネルのスピーカーと,低周波数音出力用のウーファーを設置し,走行中の電車内で録音した音源を再生し,その各周波数成分が原音と類似するよう,イコライジングすることで再現した.音楽聴取時の被験者の外耳道内音圧はプローブ型マイクロホンを使用した.測定精度向上と被験者の安全を考慮し,鼓膜表面からプローブ先端までの距離を5 mm程度とした.静寂環境下および80 dBの騒音環境下において携帯型音楽プレーヤーを使用して音楽を聴取した場合の外耳道内音圧の測定を行った.形状の異なる3 種類のイヤホンを用い,聴取する音楽としてロックおよびクラックミュージックを使用し,1 分間聴取した場合の平均音圧を算出した.なお,被験者は音楽を聴きやすいように自由に音量の調節を行った.20~30 歳代の健聴男女12 名に対し測定を行った.その結果,騒音環境下では静寂環境下で音楽を聴取した場合と比較して平均で14 dB外耳道内音圧が増加した.また,騒音環境下で音楽を聴取し過大音が入力された場合の蝸牛の負荷推定を,蝸牛の振動シミュレーションモデルを構築することにより行った.ヒト蝸牛の有限要素モデルに純音を入力した場合の基底板振動挙動を計算し,その運動エネルギーの大きさを評価した.その結果,音楽の種類による差異は見られなかったものの,使用したイヤホンの種類によって,最大で100 倍程度基底板の運動エネルギーが異なるという結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初期計画では,(A) 騒音室による環境ノイズと音楽聴取レベルの統計的調査,(B) 実験動物による騒音暴露実験,(C) 蝸牛数理モデルによる蝸牛破壊の検討 を研究目標としていた.このうち,(A)と(C)については,おおむね達成できた.一方,(B)については,蝸牛損傷の程度を定量的に評価する手段としていた歪成分耳音響放射の計測システムの再構築および校正を研究期間内に終えることができなかったため,計画を変更し,数理モデルによる検討を詳細に行うことで,蝸牛損傷部位やその程度を定量的に推定することとした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,更に被験者数を増やすとともに,騒音の種類と音圧の影響,近年標準機能として普及しつつあるノイズキャンセリングの効果を検証していきたい.また,期間中に達成できなかった実験動物による騒音暴露実験を行い,内・外有毛細胞や基底板およびコルチ器に与えられたダメージの調査を行いたい.
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Causes of Carryover |
購入を予定していた消耗品が、当初の予定より安価で購入できた為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究遂行に必要な実験器具類や実験動物の購入に使用する。
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