2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K00768
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
牛田 智 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (40176657)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インジゴ / インジルビン / インドキシル / 藍 / 生葉染め / 紫色染色 |
Outline of Annual Research Achievements |
藍染めには、藍の色素であるインジゴを化学的に還元させて染色する通常の染色方法である建て染め以外に、新鮮な藍植物を用いる生葉染めがある。この生葉染めは、インジゴが生成する前の段階のインジカン(藍植物に含有)が、植物中に含まれる酵素のグルコシダーゼで加水分解し、生成したインドキシルから、青色のインジゴを生成させて染色させる方法である。その際、インジゴの異性体である赤紫色の色素であるインジルビンが多く生成することがあり、紫色染色が可能であるが、インジルビン生成の要因や機構の詳細は十分には解明できていない。これまでの研究から、熱を加える、アルカリ性下でエタノールを添加する、染色溶液の粘度を変えるなどの条件で、インジルビンが多く生成したが、このことからインドキシルの酸化が遅い場合に、インジルビンが多く生成するのではないかということが考えられる。日本の藍植物はタデアイであり、その生葉を使う染色に関する研究であるが、タデアイは乾燥すると、前駆体(インジカン)がインジゴに変化してしまうため、乾燥してもインジカンが保持される乾燥インド藍粉末を用いて、遅い酸化条件に設定した実験を行った。 インド藍粉末を水に加えた染色液に絹布を入れ、容器の形状を変える、容器に蓋をしたり、窒素を充填して酸素が入りにくくする、水面からの深さを変えるなど、できるだけ酸素の侵入を遅くすることで、中性下、添加物無しで紫色染色ができないかについて検討した。その結果、中性下、添加物無しでも紫色に染色できることがわかった。その際の発色は、通常の生葉染めの青色発色が数10分程度であるのに対して、1日ほどかかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の対象であるインジゴ・インジルビンは、その前駆体であるインジカンから生じるが、いずれも酸化が関与している。インジゴが生成する場合は、2分子のインドキシルが酸化的に結合することが起こっていると考えられるが、インジルビンについては、インドキシルが単分子的に酸化されてイサチンが生成し、共存するもう1分子のインドキシルと反応するという過程を想定している。その機構を解明したいというのが、本研究の目的である。酸化を遅くするということで、後者のルートが優先されるということはわかり、この点については順調に進捗しているが、本当にイサチンの生成が関与しているのか、なぜ、条件が変わることで、酸化のルートが変わるのかについての知見が得られる所までには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
イサチンの生成の確認を行いたいところであるが、一時的な生成であるためか、現状では困難である。そこで、イサチンを添加することで、インジルビンの生成が促進されるかどうかを確認していく。はじめは試薬のイサチンを用いるが、誰もが(一般人が)イサチンを利用できるようにすることを想定して、インジゴと塩素系漂白剤で生じるイサチンを利用できないかを検討する。これらの条件で染色を行った場合、染色液にはインジルビンが沈殿として生成しているはずである。そこで、インジルビンの建て染め(還元による染色)を行うことができないかを検討する。インジルビン以外にインジゴも共存しいているのでこのままでは青色も染まってしまう。そこで、インジゴよりもインジルビンが選択的に還元される条件が無いかも検討する。また、これまでに引き続き、インドキシルの酸化を遅くした条件での紫色染色について、より詳細な検討も行う。
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Causes of Carryover |
本課題研究は、藍植物から濃い紫色染色を実現する機構の解明と、他の色相の染色を目指している。平成28年度は、当初予定していた情報収集(沖縄において、琉球藍の製造および染色に関する調査)を延期し、関西で開催された学会において成果発表を兼ねて小規模に実施した。このため、未使用金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、延期していた沖縄における琉球藍の製造および染色に関する調査を平成29年7月7日~10日に計画しており、その調査旅費に充当する。また、インド藍粉末を水に加えた染色液に絹布を入れて染色する実験を、溶存酸素濃度を測定しながら行うなど、これまでとは異なる方向からの実験も行う予定である。溶存酸素計などの購入にも充てる計画である。
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Research Products
(1 results)