2015 Fiscal Year Research-status Report
居住者の生活と地域防災の視点からみた住宅の維持管理に関する研究
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15K00771
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Research Institution | Mejiro University College |
Principal Investigator |
浅見 美穂 目白大学短期大学部, 生活科学科, 特任教授 (30581615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 達朗 日本女子大学, 家政学部, 研究員 (70553121)
定行 まり子 日本女子大学, 家政学部, 教授 (80235308)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域防災 / 町内会 / DIY / 家具転倒防止 / 木造住宅 / 分譲マンション / 耐震診断 / 耐震改修 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、住まいの維持管理に関する社会制度について、町内会単位の住宅の維持管理運営に対する施策提案をすることを目的とする。27年度は居住者の経年的な生活の変化と地域防災の視点から住宅の維持管理の実態を知り、現在地域で運用されている関連制度における課題を明らかにするための調査に取り組んだ。 Ⅰ.横浜市戸塚区内の町内会を対象とした調査では、居住者が住宅の維持管理のために行っているリフォーム内容・時期・依頼先と防災意識について明らかにした。東京都豊島区内の居住者を対象とした調査からは、地域防災活動実態と居住者の意識を確認した。またマンションの共用部の管理状況調査を行った。防災対策として耐震改修の実施は少ないが、家具の固定を自分や家族で行っている世帯は多く、居住者の防災意識は浸透していることが覗えた。地域ぐるみで各自の防災意識や住まいへの維持管理意識を高めるために、家具転倒防止などの居住者のDIYのニーズに、建築士などの専門家が関わる必要性とその課題を得ることができた。 Ⅱ.行政の建築局防災担当などへのヒアリング調査では、横浜市・名古屋市・京都市の住宅耐震改修促進事業や中古住宅、まちづくりに関わる取り組みの最新情報を確認した。 Ⅲ.居住者と関係者への個別訪問調査とヒアリング調査では、横浜市戸塚区、京都府内、東京都豊島区・品川区内の30年以上の長期居住の住宅の維持管理状況調査と、ヒアリングが可能となった居住者へ個別訪問を行った。また京都市内の耐震改修促進事業に関わる実務者にヒアリングを行い、制度運用状況や周辺居住者の動向について情報収集を行った。各々の制度やその運用方法は、各市の都市形成の歴史や居住者の生活が反映されており、使いやすい仕組みにするための制度フローについて示唆を得ることができた。 研究実績は2016年日本建築学会大会(九州)にて発表予定。(4月4日梗概投稿・受理)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
横浜市戸塚区内の町内会を対象とした「地域防災・住環境に関するアンケート調査」の分析はほぼ終了した。多様な居住者で構成されている地域内の戸建てと集合住宅の居住世帯、また持ち家と賃貸の世帯における住宅の内外のリフォーム実態の概要を把握することができた。築年数や居住年数が増すにつれてリフォーム件数も増加し、各世帯で外部・構造に関わる部分や内装・設備の維持管理を実施している。家具の固定に関してはDIYの他、当該地域の活動グループへの依頼もあった。このグループでは独居高齢者世帯のために障子・網戸・襖の貼り替え、蛍光灯の交換、庭木の手入れなどから家具の転倒防止対策までを行っている。地域の民生委員のニーズ発掘と連携して地域防災活動の役割も担い、個別の居住者の生活と密接に関わる活動を展開している。 東京都豊島区内の調査では、区が地区防災まちづくり支援事業として指定したことから始まった地域での活動に関わることができた。地域住民による公園整備から町内の落書き、ゴミ問題、駐輪や周辺道路の危険箇所のチェックなど、防災に留まらず住環境の安全性や快適性の維持にまで及んだ自主的な活動に拡がっている。このような活動は行政による支援事業がきっかけとなり、継続には専門家のサポートがあることが確認できた。 行政の建築局防災担当などへのヒアリング調査では、横浜市では早くから耐震制度の充実に取り組み、耐震診断士や改修設計・工事に関わる専門家の資質担保に力を注いでいること、名古屋市での運用方法は居住者や業者の負担は少ない印象であること、伝統構法の京町家への制度拡充が特徴の京都市では、古い住宅や街区を残しながら防災を進める姿勢が貫かれ、まちの匠の制度は既存の職人や専門家の持つ地域力を活かした仕組みであることなどがわかった。さらに個別のヒアリング調査において、制度運用状況や周辺居住者の動向について情報収集を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は27年度の調査を継続・展開し、異なる地域の資料の入手に努め、それらのデータを基に、居住者の暮らしに即した運用しやすい仕組みのために必要な、汎用性のある要素の抽出をする。 Ⅰ.横浜市以外の地域での町内会単位における、防災と住環境のアンケート調査やヒアリング調査を行い、これまでの横浜市内の調査との比較検討ができる資料をそろえる。対象地域は名古屋市・静岡市・神奈川県内・埼玉県内の町内会などの居住者とし、アンケート調査の内容は、①居住者が住宅の維持管理のために行っているリフォーム内容・時期・依頼先、②マンションの専有部分の変更修繕等工事履歴、③耐震診断・耐震改修補助制度への意識と、住宅に関する制度の利用実態、④町内会活動や地域防災活動実態と居住者の意識などを予定している。ヒアリングによる情報収集では、上記の地域の30年以上の長期居住者で、住宅の詳細調査とヒアリングが可能となる居住者と関係者へ個別訪問し、ケーススタディにより居住者のライフステージ毎に変化する住要求と住宅の変化、維持管理状況との関連性について確認する。また経年的にかかる費用や中古住宅のリフォームにおける耐震性などの品質・性能低下の実態を定量的に明らかにする。 Ⅱ.行政の調査として、東京都内や大阪市、仙台市の耐震関連制度のヒアリングを行い、現時点での政令指定都市などにおける、中古住宅の維持管理に関する仕組みの地域性による特色やその運用における課題をまとめる。居住者のライフステージや住宅の維持管理に必要な時期と照合した上で、居住者の暮らしに即した汎用性のある仕組みのための要素の抽出をする。 Ⅲ.以上の調査のまとめと共に、横浜市戸塚区の町内会に既にある活動団体とタイアップし、居住者の暮らしや住宅の維持管理と防災対策を一体化させた町内会への仕組み作りの基礎となる形を模索する。
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Causes of Carryover |
調査に際して当初計画において必要と思われた機材が、今年度は既存の物でまかなうことができた。また学生アルバイト料も発生しなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査用機材を年度当初に購入予定である。
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Research Products
(2 results)