2015 Fiscal Year Research-status Report
澱粉茹で調理の環境負荷低減を実現する流体解析に基づく水分移動モデルの構築
Project/Area Number |
15K00777
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
福岡 美香 東京海洋大学, その他部局等, 准教授 (10240318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 昇 東京海洋大学, その他部局等, 教授 (20134009)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 麺 / 茹で調理 / 澱粉 / 糊化 / 高分子の分散・溶出 / 流体挙動 / 塩 |
Outline of Annual Research Achievements |
炊飯や麺類の茹で調理といった澱粉食品の調理は、いずれも沸騰水下で長い加熱時間を必要とする。そのため、調理時間の短縮と、さらには消費熱エネルギーの低減が求められる加熱調理と言える。本研究は、澱粉食品の中でも特に多量の熱エネルギーを必要とする麺類の茹で調理に着目し、熱および水分の供給源となる茹で水の挙動が麺内部への水分移動におよぼす影響について明らかにすることで、麺内部の糊化および水分移動を速やかに進行させる条件を提示することが可能になると考える。 本年度は当初、温水を連続的に流せる流路システムを利用する予定であったが、流路システムにおける流量の変動が大きく、麺の茹で時間(特に乾麺)に対して安定した流量が維持できる時間が短いという結果から、業務用ガスコンロと寸胴鍋を用いたバッチ式の系で行う事とした。この時の流体挙動の定量は、鍋内の試料麺の移動速度をビデオ撮影によって決定する事とした。 また麺内の澱粉の糊化による構造変化を定量的に表す実験では、顕微鏡で撮像した画像のRGB値をLab値へ変換するCVS(コンピュータービジョンシステム)法を採用した。色彩色差計を用いた色彩値計測が1回の計測において試料内の一部の狭い領域のデータ取得に限られるのに比べて、CVS法では、同時に多点の情報が得られるという利点がある。本実験において、澱粉の糊化による構造変化を、麺内の分布としてとらえることが可能であった。さらに得られた色彩値をヒストグラムで表わすことで、定量的評価とすることができた。 さらに、乾麺(スパゲティ)の茹で調理は、通常、茹で水に塩を添加するが、水分移動に伴う塩の浸透は、流体挙動を反映した結果になることが想定される。よって麺への塩の浸透を定量することで、流体挙動を示す指標となると考えた。鍋内の流れの有無によって塩濃度の浸透に大きな違いがでることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画に記載した茹で実験における連続流路システムであるが、流量の変動が大きく、対象試料とした乾麺(スパゲティ)の茹で時間に対して安定した流量が維持できないという結果から、調理実験方法の見直しと変更が必要となった。そこで、研究実績のある業務用ガスコンロと寸胴鍋を用いたバッチ式の系で調理実験を行う事とした。また、流れの状態の定量化という点において、これまで採用していたビデオ撮像による方法は乾麺の茹で調理初期においては、適用できないという結果であったため、別途、定量手法を検討したが、塩の浸透を指標とすることで、流れの状態を定量できる可能性が示された。 水分移動モデルの構築にあたって、澱粉糊化の定量が必要であるが、顕微鏡法によって得られた2種の画像から画像解析ソフトを用いて統計的に表すことが現時点で適切な手法であると考えられた。 水分移動モデルの構築に向けて、現時点では、流体挙動の定量的記述、澱粉糊化進行度の定量化の両方において、実験の見直しと再検討の必要性が生じているが、いずれも代替手法等の検討を行った結果、これらを改善する可能性が示された。平成28年度においてこの点を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に記載した茹で実験における連続流路システムであるが、流量の変動が大きく、対象試料とした乾麺(スパゲティ)の茹で時間に対して安定した流量が維持できないという結果から、調理実験方法の見直しと変更が必要となった。そこで、研究実績のある業務用ガスコンロと寸胴鍋を用いたバッチ式の系で調理実験を行う事とした。流体挙動の定量は鍋内の試料麺の移動速度をビデオ撮影によって決定する事としたが、乾麺をトレーサーとすることが茹で調理初期において難しいという結果であった。よって、流れの状態を表現できる別の手法を検討する必要が生じた。そこで、塩の麺内部への浸透を指標とし、表面物質移動係数を算出して流れの状態を記述できないか、検討することとした。鍋内の流れの有無によって塩濃度の浸透に明確な違いが得られたことから、今後、塩の浸透についても調理時間を変数とした実験を行い、物質移動係数の算出を試みる予定である。 水分移動の支配因子の一つである澱粉の糊化は、未糊化、糊化(複屈折性の消失)、糊化後の高分子の分散、高分子断片の系外(湯水)への溶出の4段階に分けられるが、これらの状態を麺内の分布として2種の顕微鏡手法によって定性的に示すことは出来たが、定量的数値として示すことは十分ではなかった。本年度は、顕微鏡手法によって得られた糊化および高分子分散過程を示す顕微鏡画像を、画像解析ソフトを利用してRGB値をLab値へ変換することで色彩値とし、さらに統計処理を行うことで、麺内の分布の定量的評価の確立を目指した。現在、高分子分散状態に対して麺内の場所によるバラつきを考慮した定量手法を検討中である。
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Causes of Carryover |
計画に基づいて購入した消耗品のうち、温度計測に必要となる熱電対温度計に関して、調理システムの変更に基づいて本年度の購入数を減らしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画に基づいて購入した消耗品のうち、温度計測に必要となる熱電対温度計に関して、調理システムの変更に基づいて次年度実験にて使用・購入する必要が生じたため繰り越した。
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