2015 Fiscal Year Research-status Report
食用植物に含まれるヒスタミン産生抑制成分の探索とアレルギー様食中毒防止への応用
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15K00783
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
菊崎 泰枝 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (60291598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新田 陽子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (70403318)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒスチジン脱炭酸酵素 / モルガン菌 / ヒスタミン / メドウスウィート / エラジタンニン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒスタミンに起因する魚のアレルギー様食中毒発生が給食施設等で問題となっているが、魚類付着菌由来のヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)の作用により、魚に含有されているヒスチジンからヒスタミンが生成され蓄積することが原因であることが知られている。ヒスタミンは熱に比較的安定なため加熱調理では防ぐことができない。そこで本研究では、食用植物から魚類付着菌由来のHDCを阻害する成分を見出し、アレルギー様食中毒の防止に役立てることを目的としている。報告者らはこれまでにバラ科植物がヒト由来HDCを強く阻害することを見出しており、本年度は、バラ科植物に着目し、魚類付着菌のモルガン菌由来HDCも同様に阻害するかどうかを検討した。バラ科ハーブのローズレッドペタル、ローズピンクペタル、メドウスウィートの2%熱水抽出物を調製し、サバの切り身を浸漬し、ヒスタミン蓄積抑制効果を調べたところ、3抽出物ともほぼ同等にヒスタミン蓄積を抑制した。このうち、メドウスウィート抽出物を用いて、組換え体モルガン菌HDCに対する阻害活性を調べたところ、濃度依存的に阻害を示した。そこで、報告者らが以前にメドウスウィートから単離しヒト由来HDC阻害を示した4種のエラジタンニン(tellimagrandin II、rugosin A、rugosin A methyl ester、rugosin D)のモルガン菌由来HDC阻害活性を測定したところ、rugosin D>rugosin A methyl ester>rugosin A>tellimagrandin IIとなり、阻害の強さがヒト由来HDCに対する阻害の強さの順と一致した。すなわち、ヒト由来HDC阻害成分は、同様にモルガン菌由来HDCを阻害することが判明した。本研究により、エラジタンニンがモルガン菌由来HDCを阻害し、サバのヒスタミン蓄積を抑制した可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初の研究実施計画では、種々の食用植物を系統的に分類し、その上でモルガン菌由来HDC阻害活性を調べ、強い効果を示した植物がある科に特化したものかどうかを見極めて有望種を選抜する予定であった。さらに、有望種の大量抽出を行い、阻害活性画分を絞り込んでいき、順調にいけば、いくつかの化合物の単離までを計画していた。しかし、ヒト由来HDCに対して阻害を示すものがモルガン菌由来HDCに対しても同様に阻害を示す可能性があると考え、まず、ヒト由来HDCに対して強い阻害を示したバラ科ハーブに着目した。その結果、バラ科ハーブの熱水抽出物はサバのヒスタミン蓄積を抑制し、さらにモルガン菌由来HDCを同様に阻害することがわかった。また、ヒト由来HDC阻害成分のエラジタンニンがモルガン菌由来HDC阻害活性を示すことが判明した。これらの結果から、当初の計画では、幅広く食用植物を対象にモルガン菌HDC阻害活性を指標にスクリーニングを実施する予定であったが、報告者らがこれまでに明らかにしてきたヒト由来HDC阻害を示す食用植物を中心にスクリーニングすることが効果的であることがわかった。さらに、モルガン菌由来HDCを阻害した食用植物抽出物が魚のヒスタミン蓄積抑制効果を示したことから、魚のヒスタミン蓄積抑制効果を用いて有望種を絞り込み、化合物の単離を行い、その後に詳細にモルガン菌由来HDCに対する阻害の強さや阻害様式等を追究する方が効果的と判断した。次年度からスクリーニングを始めることになるので、当初予定からは遅れたことになるが、当初最終年度で魚のヒスタミン蓄積抑制効果を調べる予定にしていたので、それを次年度の研究計画に組み入れる目途もつき、その意味では、全体計画に対しておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかにしているヒト由来HDC阻害を示した食用植物、さらにその関連食用植物を収集し系統的に整理した上で、さばの切り身を用いてヒスタミン蓄積抑制効果を調べ、有望種を絞り込む。有望種の大量抽出を行い、ヒスタミン蓄積抑制効果を指標に、成分の分画、単離、構造決定を目指す。それと平行して、分画物のモルガン菌由来HDC阻害活性についても調べる。 最終年度で、単離化合物のHDC阻害活性および阻害様式および魚に対するヒスタミン蓄積抑制効果を調べ、有効成分を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初本年度研究実施予定であった多数の食用植物の抽出や有望植物の大量抽出、精製を行わず、研究対象をバラ科ハーブ3種に特定して研究を実施したため、消耗品費の支出が抑えられたため、また旅費の支出を行わなかったために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は次年度請求額と合わせて、食用植物の抽出溶媒、ヒスタミン測定用キット、モルガン菌由来HDC阻害活性測定や成分の精製・単離に必要な試薬および器具類、また必要に応じてHPLCの消耗品、修理等に使用する予定である。
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