2015 Fiscal Year Research-status Report
近赤外スペクトルを用いたフライ油のトランス脂肪酸の迅速計測技術の開発
Project/Area Number |
15K00789
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
陳 介余 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (20315584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 函 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10315608)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トランス脂肪酸 / 近赤外 / フライ油 / 劣化 / 酸価 / カルボニル価 / 総極性化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
トランス脂肪酸の分析は、一般的には日本基準油脂分析法に記載されたガスクロマトグラフ法を使っているが、脂質の前処理が必要であり、分析にも時間を要し、分析後のデータ解析も煩雑であるため、現場での利用が著しく困難である。一方、近赤外分光法は非破壊、迅速的な分析法として化学工業、製薬、医療、農業や食品など、きわめて有効かつ広い分野で利用されている。そこで、本研究ではフライ油のトランス脂肪酸と近赤外吸収スペクトルの関わりを調べ、近赤外吸収スペクトルを利用したフライ油のトランス脂肪酸の迅速評価技術の開発を試みる。 本年度の研究では、扱いにくい高粘度のフライ油試料の近赤外スペクトル測定用のプローブおよびスペクトルの測定システムを考案し試作した。熱伝導率高いアルミブロックを利用した温度制御できるフライ油の近赤外スペクトル測定システムを構築した。また、このシステムを利用して、フライ油試料の異なる温度条件下での近赤外スペクトルを測定して、フライに伴う油の劣化度を表す指標としての酸価値(AV)、カルボニル価(CV)、および総極性化合物量(TPC)との関連性を検討した結果、フライ油の近赤外スペクトルはいずれの劣化評価値に密接に関係していることが認められた。さらに、異なる食用油を用いて、180℃、200℃および220℃の温度下でポテトフライ試験を行った。劣化フライ油をサンプル試料として採取し、フライ油のトランス脂肪酸の生成状態および食油の劣化状態を調べ、またトンラス脂肪酸と近赤外スペクトルとの関連性を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度の計画通り研究を実施した。近赤外スペクトル測定用のプローブの開発とその測定システムの構築を計画通り順調に進めた。さらにフライ実験で得られた異なる劣化度のフライ油試料のスペクトル測定に応用し、スペクトルに含まれているフライ油内部の情報を検討した結果、スペクトルには劣化に関わる情報も多く含まれており、概ねこの近赤外スペクトルの測定システムが有効であることが分かった。 2016年度の計画実施は順調にはじめている。昨年度の後半から、今年度の研究実施を検討したことで、現在順調に今年度の研究計画を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度では、2015年度の研究結果を踏まえて、国内・国外の研究会・学会大会などで資料収集および研究発表を行いながら、そこでの議論を踏まえて研究を進めたいと考えている。 まず、2015年度で考案された近赤外スペクトル測定システムの計測精度、およびそのスペクトルを用いたフライ油の劣化度の計測精度を検討しながら、フライ油の形態に最も適するプローブへの改良を行う。 次に各種脂肪酸標準試薬の近赤外スペクトルを調べたうえで、トランス脂肪酸とシス脂肪酸の近赤外スペクトルにおける差異を調べながら、トランス脂肪酸をはじめ脂肪酸組成が近赤外吸収スペクトルにどのように関わっているかを調べる。具体的には各種脂肪酸標準試薬の近赤外スペクトルに対し、微分をはじめMSCやOSC等のスペクトル処理を施しながら、近赤外スペクトルにおけるトランス脂肪酸とシス脂肪酸の差異を特定する。 さらに各フライ実験で採取されたフライ油を試料として用い、トランス脂肪酸をはじめ、酸価、カルボニル価、総極性化合物量などのフライ油の劣化値との関係を検討すると同時に、近赤外領域における各波長領域の吸収スペクトルとの関係を検討する。近赤外スペクトルの微分やMSCなど前処理を施しながら、トランス脂肪酸およびシス脂肪酸と近赤外吸収スペクトルの関係をPLS回帰分析法で分析を行い、最適な波長領域に基づいた予測モデルの構築を試みる。
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Causes of Carryover |
「次年度使用額(B-A)」欄に155,391円の残金が残っている。これは、主に当初予定の旅費(35万円)に対し、実際の学会参加旅費(7万円程度)からの差額である。発表予定をした国際学会の開催は今年に変更したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この差額は今年の国際学術学会での研究発表費用(30万円予定)不足部分を補う予定で、今年度の予算は計画とおりで進めたいと考えている。
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