2016 Fiscal Year Research-status Report
自然薯の高機能性の評価とそれを利用した高齢者食の開発
Project/Area Number |
15K00792
|
Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
山本 登志子 (鈴木登志子) 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (60301313)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 慢性炎症予防 / 自然薯 / プロスタグランジンE2 / シクロオキシゲナーゼ-2 / プロスタグランジンE合成酵素 / 嚥下調整食 / テクスチャー解析 / ジオスゲニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目標は、1)自然薯の高機能性成分の単離同定ならびに、その機能性評価と分子作用機序の解明、2)自然薯の高機能性を利用した高齢者食の開発である。 このうち、1)の成分同定では、昨年度にその候補成分の一つとしてジオスゲニンを見出し、グルココルチコイド受容体を介するCOX-2発現抑制を明らかにしたが、本年度は、さらに肺癌モデルA549細胞を用いて、ジオスゲニンのCOX-2発現抑制効果とPGE2産生減少によるNF-κBの細胞質移行を明らかにし、癌細胞をアポトーシスへ誘導することを示唆した。乾癬モデルマウスにおいても、自然薯塗布によって、炎症による皮膚の肥厚の低下を観察した。 2)の高齢者食開発においては、昨年度に、クリープ試験、レオロジー解析にて、自然薯粉末溶液の物性特性を示したが、これに加え、ガラスリング法によるテクスチャー解析方法を確立し、市販の増粘剤との比較から、嚥下補助食としての十分な適合性を見出した。また、その物性特性として、温度変化による物性の変化を明らかにした。このような、物性特性をいかした食品加工を目指し、一般的に嚥下しにくい料理である団子と汁で構成される汁粉をモデルとした嚥下食への応用を試みた。団子と小豆汁への自然薯粉末添加により、団子の付着性を軽減し、液状食品にとろみを付加した嚥下食が試作でき、官能試験においても高評価を得た。加えて、温度変化によるテクスチャー変化の応用として、小籠包の皮、ソフトクリーム、米粉麺の作成を試み、いずれも官能試験において良い評価が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度同定した機能性成分のin vivo評価と、自然薯を用いた物性解析、自然薯粉末を用いたレシピ・加工品の開発である。 機能性成分の評価では、ex vivoでの評価には至ったが、in vivo評価では、自然薯抽出物における乾癬の肥厚抑制を明らかにし、現在候補成分のジオスゲニンによる効果を検討中である。 自然薯粉末の物性解析では、当初の予定に加え、新規分析方法としてガラスリング法を導入し、増粘剤(とろみ剤)などのゾル状食品をより詳細に分析できることを明らかにした。この方法を用いて、市販の増粘剤との比較により、同程度のテクスチャーが得られ、濃度を変えることで個人の嚥下機能に応じた粘性の調整が可能であることを示した。さらに、温度によるテクスチャー変化についても明らかにし、食品加工への応用が期待できる結果を得た。 レシピ・加工品の開発においては、嚥下困難な一般食から嚥下食への応用に成功し、さらには、加熱や冷却によるテクスチャー変化を応用したいくつかのレシピ作成を行い、官能試験においても評価が得られた。 さらに、研究計画には予定していなかったが、自然薯粉末の嚥下補助食としての効果を生理機能的に解析することを考え、簡便で被験者の負担を軽減できる方法として嚥下音を指標とした嚥下機能評価系の構築を進めている。これまでに、モデル食品によって評価系の構築が順調に進んでいる。 以上のように、本年度は機能性成分によるin vivo評価が完成しなかったが、食自然薯の機能性成分の作用機序とその効果のさらなる解明、テクスチャー解析による嚥下補助食としての適合性を示し、それを応用した食品加工に至った。また、当初の研究計画に加えて、新たな物性分析方法の導入、生理的嚥下機能評価系の構築などの新規項目を進めることができた。よって、総合的にみて、研究は当初の計画以上に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、現在候補成分として示されたジオスゲニンの慢性炎症モデルへの投与とその効果について検討する。さらに、テクスチャー分析については、さらに実際の食品添加における自然薯粉末の特性や有効性の検証を進める。また、嚥下機能評価系を完成させ、実際の自然薯粉末溶液の評価を行う。
|
Causes of Carryover |
消耗品納入予定額の誤差により、少々の残金が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
余剰分は、次年度の消耗品費として使用予定である。
|
-
[Journal Article] The Y54(L)W mutation of anti-leukotriene C4 single-chain antibody increases affinity to leukotriene E42016
Author(s)
Yuki Kawakami, Mai Kinoshita, Yoshiko Mori, Shuji Okochi, Shiori Hirano, Ichika Shimoda, Keita Kanzaki, Toshiko Suzuki-Yamamoto, Masumi Kimoto, Mitsuaki Sugahara, Tetsuya Hori, Hiromichi Saino, Masashi Miyano, Shozo Yamamoto, Yoshitaka Takahashi.
-
Journal Title
J. Biochem.
Volume: 161
Pages: 79-86
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] ウシ生乳由来リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素の精製と酵素学的性質.2016
Author(s)
川井恵梨佳, 田中充樹, 瀬来由衣, 戸田圭祐, 目賀拓斗, 川上祐生, 高橋吉孝, 木本眞順美, 山本圭, 村上誠, 山本登志子.
Organizer
第70回日本栄養・食糧学会大会
Place of Presentation
神戸,兵庫
Year and Date
2016-05-13 – 2016-05-15
-