2016 Fiscal Year Research-status Report
国内産大麦粉の基礎特性および各種大麦食品における材料設計と膨化性との相関解明
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15K00795
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Research Institution | Tokyo Kasei University |
Principal Investigator |
小林 理恵 (粟津原) 東京家政大学, 家政学部, 准教授 (00342014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 俊樹 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (70203643)
橋詰 奈々世 金沢学院短期大学, 食物栄養学科, 助教 (30737705)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大麦粉 / 大麦粉パン / 大麦粉シュー / 大麦粉蒸しパン / 膨化性 / 破断特性 / 増粘多糖類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度明らかにした大麦粉及び大麦粉生地の基礎特性を踏まえて、主に複合系大麦粉生地である「大麦パン」の材料配合による膨化特性の変化について検討した。大麦粉と同様にグルテンを形成しない米粉パンの調製条件を参考に、各種増粘多糖類(グアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース)を大麦粉パン生地に添加し、生地内におけるガス発生量、膨化性及び物性を調べ比較した。 増粘多糖類無添加試料(基準)及び各種増粘多糖類1%添加試料に加水し、混捏(手捏ね法)、発酵後、生地を焼成すると、各種増粘多糖類添加試料においてすだち構造の形成が確認された。さらに、加水率を140%に調製した時、増粘多糖類の種類による大麦粉生地のガス発生量に有意差はなかったが、焼成パンの比容積はいずれの試料も2.5以上であり、グルテンを形成しない大麦粉であっても、パンを製造させる基礎的条件を見いだせたことにおいて意義がある成果である。またこの加水条件においては、全ての試料において破断エネルギーが低く、やわらかく焼き上がることが示唆された。その他に、増粘多糖類の添加により、大麦粉パンのパサつきが抑制される他、その種類によりすだちの形状や咀嚼時の食感に相違がみられたため、今後は組織観察及び官能評価により、大麦粉パンの性状評価を行う。 大麦粉パン以外の複合系大麦粉膨化調理品として「シュー」および「蒸しパン」についても、小麦粉製品と比較しながら検討した。大麦粉シューは生地の加水量を増加させることにより小麦粉製品と同程度に膨化したものの、焼成生地の組織構造に相違が認められ、硬く焼き上がる傾向を認めている。大麦粉蒸しパンについては、加水量を増加させ、起泡卵白を利用することにより膨化性が向上した。この起泡卵白の包含気量により、その膨化体積が変化するため、今後これらの関連性を追究する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度明らかにした大麦粉の基礎特性を踏まえて、平成28年~29年度は、複合系大麦粉生地の材料配合と膨化特性との相関性の解明を目指して追究する計画としている。本年度は 複合系大麦粉生地として、他の調理品よりも検討時間を要すると考えられる「大麦粉パン」を主な検討課題として実施し、増粘多糖類の添加により製パン性を発現させる条件を見出すに至っており、おおむね順調にデータを収集できている。 また、大麦粉パンの他に大麦粉膨化食品として、「シュー」と「蒸しパン」についても検討課題として挙げている。それぞれ良好な膨化状態とするための加水量、および副材料の添加方法を示唆する結果が得られているものの、考察に至るためのデータ収集および解析が不足している状態である。以上のことから、学会および誌面報告に至っていないことも含め、総合的な進捗状況はやや遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成29年度においては、引き続き、複合系大麦粉生地の材料配合と膨化特性との相関性の解明を目指し、以下の通りそれぞれに追究し、成果を報告する。 <大麦粉パン> 増粘多糖類の添加により、大麦粉パンのすだちの形成及び食感に相違があったため、実体顕微鏡、電子顕微鏡により組織構造を観察する他、官能評価による性状評価を行う。また、増粘多糖類を数種複合して添加することで、さらに大麦粉パンの体積が増加する可能性がある現象を観察しているため、構造観察と官能評価の結果を踏まえ、製パンに適した増粘多糖類を選択し、これらを複合使用した時の膨化特性を調べる。これらを総合して、大麦粉のみで食パンを製造する際の調理条件を整理し、学会誌などにおいて誌面報告する。 <大麦粉シュー・大麦粉蒸しパン> 大麦粉シューは小麦粉シュー製造時よりも卵液添加量を多くすることにより、小麦粉シューと同等に膨化することが明らかとなっている。卵液添加量を増加させることにより、小麦粉生地と同様に、油脂がエマルション化し、でんぷんの均一糊化が起こっているものと予測されるため、顕微鏡観察により検証する。さらに、シューの性状については破断強度測定により客観的評価は終了しているため、官能評価により性状及び嗜好性を明らかにし、その調製条件を整理する。大麦粉蒸しパンについては、起泡卵白の包含気量と膨化体積との相関性を明らかにする。さらに客観的・主観的評価を組み合わせて、大麦粉蒸しパンの性状及び嗜好性を評価する。これらの成果は、可能な限り学会にて報告をする。
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Causes of Carryover |
平成28年度において、電子顕微鏡観察の委託費を見込んで確保していたが、観察用の試料を選定するに至らなかったため、小林の予算において次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度より繰り越した予算は、当初の計画通り、電子顕微鏡観察の委託費に加え、官能評価システムの構築にかかる費用に充てる予定である。
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