2015 Fiscal Year Research-status Report
高アミロース米の炊飯米と胚乳澱粉の特性解明に関する研究
Project/Area Number |
15K00802
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
井ノ内 直良 福山大学, 生命工学部, 教授 (80193621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芦田 かなえ 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (90450329)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高アミロース米 / 澱粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
高アミロース米は食後の血糖値の上昇やインスリンの分泌が良食味米で中アミロース米のコシヒカリなどに比べて穏やかであり、糖尿病などの生活習慣病予防に対する効果が期待されている。しかしながら、高アミロース米は一般に食味が劣っているため、わが国では普及が充分とは言えない。高アミロース米の普及のためには、従来の高アミロース米および新しいタイプの高アミロース米の性質をさまざまな角度から研究することが非常に重要と考えられる。そこで昨年度、多種類の高アミロース米試料を各地農業研究センターから入手し、精白米の炊飯特性、胚乳澱粉の構造特性・物理特性を調べた結果、高アミロース米試料間で炊飯特性、アミロース含量、糊化・老化特性、粘度特性にある程度の差異があることは想定していたが、従来の高アミロース米にはない特性をもった試料を数点見出した。これらの新しいタイプの高アミロース米の胚乳澱粉は糊化温度が高く、アミロペクチンの側鎖長分布に従来の高アミロース澱粉との違いが観察された。また精白米切片の走査型電子顕微鏡観察により、米胚乳澱粉粒の存在形態に違いが観察された。今後、従来タイプだけでなく新しい特性を持った高アミロース米に注目し、炊飯特性、糊化・老化特性、粘度特性などの物理的特性だけでなく、アミロース含量、アミロペクチンの側鎖長分布などの構造特性、難消化性澱粉(レジスタントスターチ)含量などの機能特性についても研究を行うことにより、新しい高アミロース米の用途拡大を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者が各種高アミロース米および比較米として中アミロース米の玄米を各地農業研究センターから入手し、90%の搗精度にまで精白した。得られた精白米の炊飯特性(北農研)、示差走査熱量測定計DSCによる糊化・老化特性の測定(福山大)も実施した。精白米の冷アルカリ浸漬法による胚乳澱粉の調製(福山大)、調製した胚乳澱粉のヨウ素吸収曲線の測定(福山大)も終了している。福山大学で調製した米胚乳澱粉試料を北農研に送り、難消化性澱粉(レジスタントスターチ)含量の測定(北農研)を行うとともに、生澱粉分解酵素ダビアーゼK-27による分解率の測定(福山大学)、RVAによる粘度曲線の測定(福山大学)も行った。また走査型電子顕微鏡(SEM)観察(北農研)も実施した。以上のように平成27年度の研究実施計画通りに研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は胚乳澱粉をイソアミラーゼで枝切りした生成物を中圧ゲル濾過法で分析することにより、アミロース含量とアミロペクチンの長鎖と短鎖の割合を測定する。また、胚乳澱粉からアミロペクチンを精製し、同様に分析することによりアミロペクチンの超長鎖含量を測定し、澱粉の測定結果と合わせて、澱粉の真のアミロース含量を算出する。また、昨年度以外の高アミロース米試料が入手できた場合には、昨年度と同様の分析および上記の実験についても実施する。さらに、昨年度と同一の品種(または試験米)が入手できた場合にも、高アミロースの同一品種米(または試験米)の年次間差を明らかにするために実験を行う。
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Causes of Carryover |
北海道農業研究センターで、事情により人件費の予算額以下の支出に留まり、209,765円の差額を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に昨年の差額金額を上乗せして人件費を使用する。
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