2015 Fiscal Year Research-status Report
食品のおいしさ評価を目指した味覚・嗅覚計測システムの創製と感性情報データとの融合
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15K00806
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Research Institution | Tomakomai National College of Technology |
Principal Investigator |
小島 洋一郎 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (50300504)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | おいしさ / センサシステム / データ解析 / 食品 / 感性情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品製造業において現在、迅速かつ正確に味の評価を行うパネラーの確保や育成など、解決すべき事項が未だ数多く残されている。このような状況から、食品の味を客観的に分類・数値化する計測評価システムの確立が喫緊の課題である。そこで今年度は、理化学機器を複数用い、得られた測定データを統計的に情報処理するシステムの構築を行った。このシステムにより風味調味料である“だし”の分類を検討した。 市販の風味調味料の“だし”をサンプルとして、食品企業2社から製造販売されている合計7種類を用いた。内訳は、かつお風味の4種類(①A社かつお、②A社かつおCa添加物、③A社かつお減塩タイプ、④B社かつお)、こんぶ風味の2種類(⑤A社こんぶ、⑥B社こんぶ)、いりこ風味の1種類(⑦A社いりこ)である。顆粒サンプルの“だし”は、脱イオン水に溶解し、市販風味調味料“だし”のパッケージ裏に書かれている目安と同様に0.667%の濃度に希釈した。 これらの風味調味料“だし”水溶液について、測定原理の異なる異種センサにより11項目(透過率、pH、電気伝導率、密度、粘度、糖度、塩分濃度、4種類のイオン濃度)の測定を行った。その結果、異なる会社の製品でも、かつお・こんぶなど、風味が同じものは同じグループに分類されることが分かった。また、4つあるかつお風味“だし”の中でも、カルシウムなどの成分が添加されていたり、塩分を抑えるために代わりの成分が添加されていたりすると、添加されていない風味調味料“だし”とは異なるグループに分類されることが明らかとなった。このように“だし”の分類や評価に有効な手法となり、センサシステム構築に向けた基礎データの取得ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本料理では、コンプでだしを取った後に、かつおのだしと混ぜ合わせることが多くある。これはうま味に相乗効果があるためである。この効果は、たとえば、アミノ酸系のグルタミン酸と核酸系のイノシン酸とグアニル酸とを合わせると単独の時よりも非常に強いうま味を感じることを言う。本年度末まで、このような相乗効果の実験を機器システムにより行うことを予定していたが、非常に多くある基本データの取得に時間を費やしたため若干遅れを生じてている。また、理化学測定のみならず、アンケートによる調査・検討を企画していたが、質問表への参加者が少なく、官能検査を行うパネラーの育成においては、多くの時間を要したことも原因としてあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
食品のおいしさを「視覚化」するセンサシステムの開発には、測定原理の異なる機器による分析と、人の感覚に合わせたデータの解析がキーテクノロジーとなる。そのため、次年度は、味覚の数値化に向けて、“だし”単独味の測定を継続して行うことに留まらず、5つの基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)と“だし”の混合水溶液の計測から、おいしさ評価の基本情報を獲得する予定である。さらに、データの取得のみでは、人の感じるおいしさを表現、もしくは、デジタル化するには困難を伴うため、近年多種多様な分野で注目されている機械学習技術の利活用を検討している。このテクノロジーは、人が経験によって学習するのと同様、人工知能が大量のデータを処理する中から、ルールや知識を学習するというものであるため、おいしさを認識するシステムには不可欠であると考えられる。
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Causes of Carryover |
当初予定していた機器を購入する上で、基礎データの取得に想定以上に時間を要したため、選定が遅れた。また、学内研究予算や外部資金を有効に活用したため、科研費の使用を次年度に見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度末までのデータにより機種の選定計画が進んでおり、本年度の早期に新たな機器を購入する予定である。また、国際学会や国内での学術集会での発表があるため、旅費に関しても予定通り使用する予定である。
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Research Products
(5 results)