2015 Fiscal Year Research-status Report
革新的低温ストレスによる根菜類の美味しさファクターの制御
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15K00807
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Research Institution | Aomori Prefectural Industrial Technology Research Center |
Principal Investigator |
高橋 匡 地方独立行政法人青森県産業技術センター, 弘前地域研究所, 主任研究員 (90512830)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農林水産物 / 低温・冷凍 / アミノ酸 / 糖質 / ポリフェノール |
Outline of Annual Research Achievements |
市販のナガイモ(青森県産)とゴボウ(群馬県産)を試料として、示差走査熱量計(DSC)を用いた冷却・昇温試験を行った。その結果、ナガイモ切片では-3℃前後、ゴボウ切片では-5℃前後に融点(=凍結点)が存在すると推定された。 続いて、ナガイモ(青森県産)およびゴボウ(青森県産)の低温ストレス負荷試験を行った。ここでは、試料を切片化して脱気包装後、5℃、-2℃、-10℃、-20℃での定温保管に加え、5℃と-2℃の間での定期的な入れ替えや、一晩20℃庫内に移行させて温度ショックを与える条件を設定し、最長で6週間の試験を行った。 それぞれの試験区についてアミノ酸分析、ポリフェノール測定、糖分析を行った結果、ナガイモでは、低温処理前試料に比べ血圧降下作用、精神安定作用、脳機能改善作用などの効果が注目されている機能性成分γ-アミノ酪酸(通称:ギャバ)が、-20℃保管を除く全ての試験区で増加していることを確認し、最も増加した試験区では処理前に比べ約9倍に達した。ポリフェノール量は、保管期間が長くなるにつれて増加する傾向にあったが、最大でも1.5倍程度であった。糖分析の結果からは、低温処理による増加は確認されなかった。一方、ゴボウ試料についても同様に5℃から-10℃の低温保管中にギャバが増加することを確認した。 ギャバの増加については、酵素反応を促進させるために室温以上で検討した報告は多く見られるものの、氷点下での増加は新たな知見と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の低温ストレス条件では甘味関与成分を増加させることはできなかったものの、当初想定していなかった機能性成分ギャバが増加するという学術的、産業的にも価値のある知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
-10℃の低温保管中にもギャバの増加を確認しており、酵素反応によるメカニズムでは説明が難しい現象が見られた。今後、ターゲット成分をギャバに絞り、低温と成分増加の関わりについてさらに詳しく追求する。これまでの結果では、試験開始から2週間でのギャバ増加が顕著であったことから、低温ストレス負荷開始から初期の段階における成分変動を追跡することとし、処理条件を細分化しながら再現性を確認する。
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