2016 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティクス制御による新たな認知症予防食品開発のための基礎的解析
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15K00814
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
長井 薫 甲子園大学, 栄養学部, 教授 (20340953)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 機能性食品 / 認知症予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、Hdac阻害剤による多くの神経変性疾患に共通の小胞体ストレスからの神経系細胞の保護効果と、ミトコンドリア増強効果に関して解析を行ってきた。昨年度はそのHdac特異性について解析を行い、Hdac1, 3にミトコンドリア機能亢進を介した神経細胞保護作用がある可能性を示すデータが得られたことを報告した。本年は、Hdac阻害剤にミトコンドリア増強効果が見られたことから、Hdac阻害剤による酸化ストレス抑制効果の有無、また食品成分としてのリン脂質やオリゴ糖について同様にミトコンドリア増強作用による神経細胞保護作用があるのか否かについて解析を行った。ミトコンドリア増殖作用がみられたHdac1, 3特異的阻害剤であるMS-275には小胞体ストレスからの保護作用と同様に一酸化窒素(NO)による酸化ストレスからの保護効果が確認された。また、以前、小胞体ストレスからの神経保護効果が、特定の構造を有するリン脂質やオリゴ糖に見られることを観察していたことから、これらに関するミトコンドリア増加作用について観察を行った。その結果、リン脂質類の中で細胞保護作用の高い不飽和脂肪酸を含有したホスファチジルエタノールアミンの幾つかにミトコンドリア増加作用が認められたが、細胞保護効果の強弱や脂肪酸の不飽和度とミトコンドリア増強作用の強弱に相関は認められなかった。オリゴ糖については、食物繊維分解産物である一部のオリゴ糖について、リン脂質と比較して弱いながらもミトコンドリア増加作用が見られた。ごく最近、細胞内異常タンパク質がミトコンドリアに輸送されて、その分解が促進されるという報告がなされ注目を集めている(Nature, 2017)。我々の研究成果はミトコンドリア増加作用を介して異常タンパク質の分解を促進し、神経保護作用を示すという新しい経路の食品による活性化を強く示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリア増強作用のシグナル伝達部分については、当初の予定通りに結果は得られていないが、小胞体ストレス以外のストレスに対しても保護作用を示すことや、解析した食品由来成分がオートファジーのオートファゴソーム形成に影響を及ぼすことを示唆する結果が得られ始めていることから、おおむね予定通りの進捗状況であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリア増強作用と細胞保護効果が本当に相関があるのかについて、各種阻害剤を用いて検討をすすめる。それと同時に、機能を有する食品成分が疎水性部分と親水性部分を有する物質であることを考え、アルツハイマー病の原因とされるアミロイド形成への直接作用、およびミトコンドリアへのアミロイドβの取り込み作用についても解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
所属先の異動のため、前任地では必要のなかった装置等を研究の進行のため拡充する必要が生じたため、試薬等その他の費用を節約し複数年度分の費用での購入で対応することとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
再検討の結果、旅費の当初予定額を減額し、繰越金と合わせて細胞培養関連の機器購入に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)