2016 Fiscal Year Research-status Report
カンピロバクター感染による栄養飢餓をターゲットとした栄養療法有用性の検討
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15K00819
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
下畑 隆明 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (90609687)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Campylobacter jejuni / Autophagy / amino acid / mTOR |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年の検討では主に、1.カンピロバクター感染によるオートファジー誘導機構について、2.オートファジー阻害によって生じる代謝変化と菌の生存について実験を行った。 1. カンピロバクター感染によるオートファジー誘導機構については、オートファジー誘導の中心的なシグナル伝達系であるmTORを中心に解析を行った。mTORは栄養センサーとして働き、エネルギーの枯渇によって脱リン酸化され、オートファジーを誘導することが知られている。本研究よりカンピロバクター感染細胞でmTORの脱リン酸化傾向と、その下流のS6Kの明らかな脱リン酸化を確認した。またmTOR-クラスIII PI3K経路の阻害剤である3-MAを用いた検討では、3MA処理によってカンピロバクター感染によるLC3-IIの蓄積が著しく抑制されたため、カンピロバクター感染によって誘導されるオートファジーもmTORを介して誘導されていることが示唆された。同様にmTORの上流のシグナル伝達系(AMPK, MAPK, PI3K)についても感染によるオートファジー誘導との関連を検討したが、感染によるオートファジー誘導機構としてmTORより上流の経路を見出すことはできなかった。 2. オートファジーが感染宿主細胞の代謝に与える影響を解析するため、オートファジー阻害剤を用い、感染宿主細胞の代謝変動を解析した。昨年の検討よりカンピロバクター感染細胞では細胞内のアミノ酸含有量が上昇することが明らかとなっていたが、オートファジー阻害剤存在下では感染によるアミノ酸の変動が緩やかとなり、オートファジーが感染宿主細胞内のアミノ酸変動に大きく寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究では、1.カンピロバクター感染におけるオートファジー誘導機構、2.オートファジーによってもたらされるエネルギー供給変化、について解析を行うことが出来た。 1. カンピロバクター感染における、オートファジー誘発機構については、主要な経路としてmTORを介したシグナル伝達系が重要であることが明らかとなった。またmTORよりも上流のシグナル伝達系については、AMPK、PI3K、ERK1/2について検討を行い、確かな関連を見出すことが出来なかったものの、他の細胞内侵入細菌とは異なる機構でmTORの脱リン酸化を引き起こしている可能性も示唆され、カンピロバクター感染を特徴付ける大きな成果を得ることに成功した。 2. オートファジーがもたらすエネルギー供給変化について行った研究では、カンピロバクター感染細胞で増加する細胞内のアミノ酸含有量はオートファジー阻害剤処理で変動が減弱することが明らかとなり、この結果からカンピロバクター感染に特徴的な細胞内アミノ酸変動がオートファジーに由来することを示ことが出来た。 以上の結果からカンピロバクターは細胞内での生存戦略として宿主上皮細胞でオートファジーを誘導している可能性が示され、オートファジー誘導の意義とメカニズムについて実験開始時の想定とは異なるメカニズムではあったものの、十分な研究進展が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年、28年度の研究から、オートファジーの誘導は感染細胞内のアミノ酸含有量を高め、細胞に侵入した菌の生存に役立つことが明らかとなったが、一方で依然としてオートファジー誘発因子の検索は解析が進んでいない。また感染における細胞内のアミノ酸変動は大きく、オートファジー以外にも細胞内のアミノ酸供給機構に寄与する因子が存在することが考えられる。そのため今後は1.オートファジー誘導因子の検索、2. 細胞内のアミノ酸変動機構の解析、3.アミノ酸供給に対する感染宿主細胞細胞の応答、以上3点について検討を進める。 1. 当初予定していた遺伝子破壊株を用いた検討ではオートファジー誘導因子を特定する良好な結果が得られなかった。しかしながら検討を進める中でカンピロバクターは上皮細胞との共培養中に、オートファジー誘導因子を溶液中に放出していることが明らかとなってきた。そのため今後、培養上清のたんぱく質及び化合物の網羅的な解析を行い、オートファジー誘導因子の特定を試みる。 2. 感染宿主細胞内のアミノ酸変動をきたす因子として、アミノ酸トランスポーターに注目し、感染による宿主のアミノ酸トランスポーター発現とアミノ酸輸送能の変動について詳しく解析を行う。 3. アミノ酸の供給は細胞内の菌の生存を高め働きがあるが、アミノ酸供給が宿主細胞に及ぼす影響は明らかでない。アミノ酸供給がカンピロバクター感染時の増悪因子となるのか精査するため、アミノ酸添加条件でのサイトカインの分泌を評価し、カンピロバクター感染時の栄養療法における、アミノ酸供給の必要性について考察する。
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Causes of Carryover |
年度末分の物品で、納期が遅れたものがあったため、次年度使用額が生じた。差額は次年度4月の収支に計上する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに物品として使用されており、差額分は4月分の収支に計上される。
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Research Products
(3 results)