2015 Fiscal Year Research-status Report
ビタミンA・β-カロテンの代謝調節機序とその栄養状態による生体調節に関する研究
Project/Area Number |
15K00835
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
駿河 和仁 長崎県立大学, 看護栄養学部, 准教授 (70315852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 範晃 長崎県立大学, 看護栄養学部, 助教 (80516295)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ビタミンA / β-カロテン / 小腸 / 高脂肪食 / 低たんぱく質食 / スナネズミ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は①「β-カロテンの吸収・代謝調節に関する分子栄養学的検討」および②「スナネズミを用いた食餌要因によるβ-カロテンの生体利用効率と吸収・代謝調節の検討」をテーマに研究を行った。 研究①については、β-カロテン(以下BC)のビタミンAへの転換に関与するラット小腸のBCMO1遺伝子および酵素活性が、アルコールや高脂肪食摂取により有意に減少した。さらにこれらのラットでは、同時に摂取したBCがビタミンAへ転換されにくくなっており、肝臓に蓄積することが明らかとなった。また、小腸BCMO1遺伝子の転写抑制因子である小腸ISX発現量の増大と転写促進因子である小腸PPARδ発現量の減少していたことから、BCMO1遺伝子発現量の減少にはこれらの転写因子の両方またはどちらかが関与している可能性が示唆された。本研究結果の一部は、昨年度および今年度5月に学会発表を行った。 研究②については、ヒトと比較的BCの吸収・代謝動態が類似しているスナネズミを用い、食餌要因の違いによるBC吸収・代謝について検討を行った。これまでのラットの研究結果と同様に、スナネズミのBCMO1遺伝子および酵素活性は短期間の高脂肪食摂取により小腸においてのみ有意に低下した。一方、ビタミンA欠乏食の摂取下では、小腸BCMO1遺伝子発現量および酵素活性は増大した。さらに低たんぱく質食摂取による対しては、肝臓や血中のビタミンA量の減少が見られたが、小腸や肝臓ではビタミンAやBCの吸収・代謝を促進する遺伝子(BCMO1、CRBPⅡ)の発現を高まっており、代償的に生体内のビタミンAレベルの低下を抑制している可能性が示唆された。以上の結果から、スナねずみのBCやビタミンAの吸収・代謝は、種々の食餌条件により遺伝子レベルで調節を受けることが明らかとなり、ヒトにおいても同様の影響が見られるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時のH27年度研究計画①および②では、おもに動物実験を中心とした検討を目的とし、さらにその結果に対するメカニズムの解析も視野に入れたものである。研究①に関しては、ラットを用い高脂肪食およびアルコール摂取によるβ-カロテン吸収・代謝に対する影響の検討を実施し、その変動とその制御因子の関与を示唆する結果を得ている。同研究計画では、その制御因子関与の実証についても検討を行うこと目的としており、現在も実験系の構築を含め継続して実験を行っている。研究②に関しても、スナネズミを用い、種々の食餌条件(高脂肪食、ビタミンA欠乏食、低たんぱく質食)によるβ-カロテン吸収・代謝に対する影響の検討を実施した。この研究テーマについてもこれらの食餌条件による変動に関与する因子の解析についても検討を行う。以上の状況より、現在も進行中および一部未実施の項目があるが、おおむね75%ほどの解析項目については実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、当初の計画どおり「妊娠・授乳期のビタミンA栄養状態が生後の栄養素の吸収・代謝機能に及ぼす影響の検討」について、特にビタミンA・β-カロテンと脂質の吸収・代謝について検討を行う。動物の飼育開始は当初4月からの予定であったが、諸事情により現在は7月から動物飼育の実施を計画しており、年度内に予定している解析項目について測定を実施する。また、前年度の研究計画で現在進行中および一部未実施の項目については今年度も引き続き研究を実施し、成果をまとめていく。最終年度(H29年度)実施予定の研究計画「病態モデル動物を用いた生体機能異常発症に対するビタミンA栄養状態による影響の検討」については、糖尿病と骨粗鬆症・筋委縮モデル動物に対する影響を計画しているが、具体的な研究計画を今年度中に再度検討し、研究遂行できるように準備していく。
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