2017 Fiscal Year Research-status Report
機能性食品であるグルコサミンの抗炎症作用の分子メカニズム
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15K00844
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
染谷 明正 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90167479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長岡 功 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60164399)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グルコサミン / O-GlcNAc修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
グルコサミンが抗炎症作用を持つことは知られているが、そのメカニズムの詳細はまだわかっていない。そこで、グルコサミンが抗炎症作用を発揮するためのメカニズムについて、ヒト滑膜細胞株MH7Aを用いて検討している。特に、NFκBのシグナル経路に着目し、その中で翻訳後修飾の一つであるO-N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)修飾を介した作用について検討している。 昨年度から、グルコサミンでO-GlcNAc修飾されるNFκBのp65サブユニットのアミノ酸残基の同定を、引き続き行っている。質量分析による同定を試みているが、精製純度が高いO-GlcNAcされたp65を大量に必要とするため、現在もまだサンプル調製と解析を繰り返し行っている段階である。 また、その一方でグルコサミンが、p65以外のNFκBシグナル経路に対してどのような影響を及ぼすのか、特に上流のシグナル分子に対してO-GlcNAc修飾を介した影響について検討している。その結果、グルコサミンはNFκBの阻害タンパク質IκBα、IκBβ、IκBεの分解を抑制することがわかった。特にIκBαに対してグルコサミンは、プロテアソームでの分解に必要なリン酸化を、O-GlcNAc修飾依存的に抑制することを見出した。さらにグルコサミンは、p65とIκBαとのinteractionをO-GlcNAc修飾依存的に増強することも分かった。したがって、グルコサミンはp65を直接O-GlcNAc修飾してNFκBの機能に影響するだけではなく、p65以外のタンパク質のO-GlcNAc修飾を介してIκBαの機能を制御していると考えられ、複数の作用を介してNF-κB経路の活性化を制御・抑制している可能性が推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(理由) ヒト滑膜細胞株MH7Aを用いて研究を進めているが、グルコサミンを作用させるための実験条件、すなわち炎症に重要なNFκBやp38MAPキナーゼの活性化やリン酸化を抑制するとともに、O-GlcNAc修飾を促進するための条件を設定するのに時間を要した。また、グルコサミンでO-GlcNAc修飾されるNFκBの p65サブユニットのアミノ酸残基の同定に時間がかかっている。そのため、O-GlcNAc修飾部位の変異体を用いたin vitro, in vivoでの解析に、遅れが生じている。一方、NFκB 活性化の上流シグナルに対するグルコサミンの影響も同時に検討している。そして、グルコサミンはp65を直接O-GlcNAc修飾して影響を及ぼすだけでなく、NF-κBの阻害タンパク質IκBαに対しても、O-GlcNAc修飾を介して制御していることを示す結果が得られている。現在、p65のO-GlcNAc修飾を受けるアミノ酸残基の同定と、IκBαのO-GlcNAc修飾を介した制御機構を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
グルコサミンによりp65のO-GlcNAc修飾を受けるアミノ酸残基の同定を継続する。また、グルコサミンがIκBαの機能をどのように調節しているのかを調べる。まずグルコサミンがIκBαを直接O-GlcNAc修飾するのか、あるいは別のタンパクのO-GlcNAc修飾を介して影響しているのかを、免疫沈降法や阻害剤で検討し、ターゲットタンパク質を同定する。そしてO-GlcNAc修飾状態を変えた変異体を用いて、グルコサミンがターゲットタンパク質のO-GlcNAc修飾を介してどのようにNF-κBシグナル経路を制御しているかを調べていきたい。
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Causes of Carryover |
(理由) O-GlcNAc修飾部位の同定に遅れが生じている。そのため、質量分析用のサンプル調製のための免疫沈降に必要な試薬類の購入、またタンパク質発現実験に必要な消耗品の購入、および動物実験に必要な経費を次年度に持ち越すことになった。 (使用計画) タンパク質の同定ならびにO-GlcNAc修飾部位の決定するための質量分析等の費用として使用する。また、タンパク質の分離やシグナル伝達の解析に必要な抗体や阻害剤等の購入、タンパク質発現に必要な試薬の購入、ならびに動物の購入・飼育の費用として使う予定である。そして研究成果を学会や論文で発表するための費用にも充てる予定である。
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