2016 Fiscal Year Research-status Report
低マグネシウム血症に伴う突然死の原因究明とマグネシウム補充療法の有用性の検討
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15K00846
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
渡邉 マキノ 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00255655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家崎 貴文 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (10348956)
中村 京子 順天堂大学, 医学部, 助教 (90578858)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 低マグネシウム血症 / ミトコンドリア / Ca2+感受性 / 心機能 / 血管平滑筋収縮機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
マグネシウム(Mg)は生体機能に複雑に関与しているが、近年の食習慣の変化には、低Mg血症発症のリスクを増加させ、心血管病やメタボリックシンドロームの発症・進展に寄与していると考えられている。我々はこれまでに慢性的な低Mg血症モデルを作製し、重篤な低Mg血症ラットでは心血管機能が低下していることを示した。本研究ではin vivo実験系(心エコー、腹部エコー、心電図の記録など)とin vitro実験系(生理学実験と組織学的検討)を並行して検討することにより、慢性的低Mg血症に伴う病態の進展を明らかにし、低Mg血症に伴う病態の予防・抑制のためのMg補充プロトコールを決定する基礎データを取得することを目的としている。 【in vitro実験系】前年度に記録した心電図の解析を試みたが、安定した記録ができておらず、次年度に再度、データを記録し直す必要があることが示唆された。 【in vitro実験系】前年度の実験で、Mg欠乏群の摘出大動脈標本において収縮不全が認められ、その機序としてCa2+感受性が低下していることが示唆されていた。今年度、さらに検討を進めたところ、Ca2+感受性の低下のみならずCa2+非依存性の平滑筋収縮メカニズムも障害されている可能性が示唆されるデータが得られた。今後、収縮反応機序のどの部分が障害されているのか検討する必要がある。 心機能に関しては、これまでの研究でMg欠乏群においてミトコンドリア機能が障害されていることが示唆されていたが、単離ミトコンドリアを電顕にて観察したところ、正常なミトコンドリア数が減少していることを示す結果が得られた。Mg欠乏群における心機能の低下がミトコンドリア機能の低下によるものか、正常ミトコンドリア数の減少によるものかの検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定より研究以外の学務が多忙となり、予定していた心エコー、心電図の再評価が進まなかった。また心臓の病態生理学的実験はほとんどできなかった。 血管平滑筋機能の評価については、学部学生の実験補助もあり順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
心エコー、心電図の解析については今後、動物飼育施設の改築等が計画されており、長期間機器が使用できない可能性があるため、他の方法での心機能の評価を試みる予定である。 Mg欠乏ラットのフェノタイプとして四肢浮腫、胸水貯留、皮膚の炎症などが見られるが、これらの症状は衝心脚気の症状と類似しているとの指摘を受けた。そのため血中ビタミンB1レベルを測定したところ、Mg欠乏群では有意に低下していることが判ったため、食餌によるビタミンB1補充がMg欠乏による心機能低下に有効であるかを検討する予定である。 これまでの研究でMg欠乏群においてミトコンドリア機能が障害されていることが示唆されていたが、単離ミトコンドリアを電顕にて観察したところ、正常なミトコンドリア数が減少していることを示す結果が得られた。Mg欠乏群における心機能の低下がミトコンドリア機能の低下によるものか、正常ミトコンドリア数の減少によるものかをミトコンドリア透過性遷移孔(mPTP)開孔実験および電顕による形態学的観察から検討する。
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Causes of Carryover |
当初の予定より研究以外の学務が多忙となり、予定していたモデル動物の作製費用(動物代、特殊飼料代)が減少し、当該研究費が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の研究の推進方策の項で述べた通り、Mg欠乏群において血中ビタミンB1レベルの有意な低下が認められたため、新たにMg欠乏食にビタミンB1を増量した餌やその対照となる餌などを作製する必要があり、これらに使用する予定である。 ミトコンドリアの形態学的観察は標本の作製および撮影を学内の電子顕微鏡室に依頼し、使用する予定である。
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