2016 Fiscal Year Research-status Report
香酸柑橘ジャバラ由来抗肥満成分の探索と作用機構の解明
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15K00866
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Research Institution | Wakayama National College of Technology |
Principal Investigator |
奥野 祥治 和歌山工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (60458073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇都宮 洋才 和歌山県立医科大学, 共同利用施設, 准教授 (60264876)
河野 良平 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70569110)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 香酸柑橘 / ジャバラ / 脂肪前駆細胞 / 抗肥満効果 / ポリメトキシフラボノイド / 3T3-L1細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
メタボリックシンドロームや生活習慣病の要因となる肥満は増加の一途をたどっており、その予防・治療法の開発は世界的な課題となっている。その一つの手段として、植物などに含まれる抗肥満物質を探索し、その作用機構を解明する研究が盛んにおこなわれている。本研究では和歌山県原産の香酸柑橘であるジャバラ由来の抗肥満物質を探索し、その作用機構を解明することを目的とした。 27年度は、脂肪前駆細胞である3T3-L1細胞に対する脂肪滴蓄積抑制効果を指標として、ジャバラ果皮抽出液より3種のポリメトキシフラボノイドを単離、構造決定した。また、これら3種の活性物質は、脂肪細胞内で脂肪合成に大きくかかわる酵素であるグリセロール-3-リン酸脱水素酵素の誘導に対しても、強い抑制効果を示すことを明らかにした。 2年目である28年度は、活性物質の脂肪細胞に対する浸透能、脂肪分解活性および脂肪蓄積に関与する遺伝子の発現に対する活性について検討した。まず、脂肪細胞に対する浸透能では、活性物質で処理した細胞を溶解し、細胞内の成分をHPLCにより分析したところ、すべて活性物質が細胞内に浸透していた。特に活性物質の一つである3-hydorxy-5,6,7,8,3',4'-hexamethoxyflavoneは細胞内でグルクロン酸抱合されていることがLC-MS分析により明らかになった。しかし、浸透能と活性の相関関係は見いだせなかった。次に、脂肪細胞に対する脂肪分解活性では、すべての化合物が強い脂肪分解活性をしめし、肥満改善効果への期待が持てた。さらに、活性物質の一つである3,5,6,7,8,3',4'-pentamethoxyflavoneの脂肪蓄積に関与する遺伝子の発現に対する活性についてRT-リアルタイムPCRにより検討した結果、PPAR-γおよびGUL-4の遺伝子発現を強く抑制していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、ジャバラより単離・構造決定した活性物質の脂肪細胞に対する脂肪分解活性と脂肪蓄積に関与する遺伝子の発現解析による作用機構の解明を計画していた。脂肪分解活性については構造決定したすべて活性物質において強い脂肪分解活性がみられることを明らかにした。この活性物質の精製、構造決定および脂肪分解活性までの成果を国際学会において発表した。一方、遺伝子の発現解析については、3種の活性物質について検討したが、現在1種の活性物質の解析のみにとどまっている。しかし、本年度は、当初の計画以外に活性物質の細胞に対する浸透能の検討を行い、浸透性の分析手法の開発および分析に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27、28年度では、ジャバラ果皮より抗肥満物質の単離、構造決定および作用機構の解明を進めてきた。平成29年度では以下の点について研究を進める。 (1)抗肥満活性に対する作用機構の解明:脂肪前駆細胞が脂肪細胞へ分化し、脂肪滴を蓄積する過程において関与する遺伝子群の発現に、活性物質がどのように関与しているかを、リアルタイムPCR、ウエスタンブロット法等を用いて検討する。 (2)研究成果をまとめ、学会発表および学術誌への投稿を行う。
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Causes of Carryover |
初年度の計画がスムーズに進み、平成28年度は29年度の予算の一部を前払い請求し、研究を進めたが、すべての活性物資の遺伝子発現解析にまでは至らなかったため、その費用が少し残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度において、活性物質の脂肪細胞に対する遺伝子発現解析を継続するため、その試薬、キットの購入費として使用する。
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