2016 Fiscal Year Research-status Report
抗酸化食品成分による内臓脂肪組織の慢性炎症抑制機構の解明
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15K00867
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
小堀 真珠子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門 食品健康機能研究領域, ユニット長 (50353941)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | β-クリプトキサンチン / ケルセチン / クルクミン / 内臓脂肪組織 / 慢性炎症 / 肥満 / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満の内臓脂肪組織で生じる慢性炎症が、インスリン抵抗性を惹起し、メタボリックシンドローム発症の主な原因となることから、β-クリプトキサンチンの摂取が、西洋型食摂取による肥満モデルマウスの内臓脂肪組織に及ぼす影響を検討した。0.01%のβ-クリプトキサンチンを高脂肪・高ショ糖・高コレステロール食である西洋型食に添加して、16週間摂取させた結果、β-クリプトキサンチンは体重の増加を抑制しなかったが、血糖値を有意に低下させた。しかし、肝臓、内臓脂肪組織である精巣周囲脂肪組織及び血中の酸化ストレスマーカーの有意な低下は認められず、肝臓の抗酸化酵素の発現の有意な上昇は認められなかった。また、精巣周囲脂肪組織の炎症マーカーの抑制作用も認められず、食餌性肥満モデルマウスにおけるβ-クリプトキサンチンの慢性炎症抑制効果は弱いと考えられた。一方、抗酸化食品成分のクルクミンは0.1%の濃度で食餌性肥満モデルマウスの血糖値及び精巣周囲脂肪組織の酸化ストレスマーカーを低下させる。そこで、DNAマイクロアレイによる精巣周囲脂肪組織の遺伝子発現解析の結果を、0.05%のケルセチンを摂取させた食餌性肥満モデルマウスの精巣周囲脂肪組織の遺伝子発現解析の結果と比較した。その結果、いずれも強い酸化ストレス抑制効果を示すものの、慢性炎症を引き起こす免疫細胞の増加及び活性化に関わる遺伝子発現の抑制作用はケルセチンで強く、クルクミンで特徴的な炎症抑制作用は見出されなかった。このようにモデルマウスを用いた試験から抗酸化食品成分による慢性炎症抑制効果の特徴が明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予想していたβ-クリプトキサンチンの肥満モデルマウスの内臓脂肪組織における慢性炎症抑制作用や慢性炎症の初期に起こる脂肪細胞のクラスⅡ主要組織適合遺伝子複合体(MHC-Ⅱ)の発現抑制作用は認められなかったものの、DNAマイクロアレイを用いた比較解析により、抗酸化食品成分であるクルクミンとケルセチンの慢性炎症抑制作用の違いを明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
食餌性肥満モデルマウスの内臓脂肪組織におけるケルセチンとクルクミンの慢性炎症抑制作用の違いが明らかになったことから、更に検討を進め、作用機構を明らかにする。また、合わせて培養細胞を用いた検討を進め、それらの結果に基づいて抗酸化食品成分による内臓脂肪組織の慢性炎症抑制機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、研究費を効率的に使用して発生した額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
慢性炎症抑制効果の作用機構解明に必要な、動物組織を用いた遺伝子発現解析やその他の解析、及び培養細胞を用いた解析に使用する。
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