2015 Fiscal Year Research-status Report
災害時における食・栄養の支援システム構築に関する研究
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15K00868
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
笠岡 宜代 (坪山宜代) 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 栄養疫学研究部食事摂取基準研究室, 室長 (70321891)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 災害 / 栄養 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災の被災地での食・栄養に関連する問題を解析し、その教訓と課題を平時からどのように解決できるか検討するため、本年度は以下を行った。東日本大震災の被災地に在住する管理栄養士・栄養士(以下、栄養士)1911名(回収数435名)を対象とした調査を分析した。 1. 東日本大震災において被災地派遣された栄養士の支援活動における有効点と課題: 「派遣された栄養士と活動して有効だったこと、困ったこと」の自由記載(記入者58名)をKJ法により解析し、有効点と問題点を抽出した。有効点として、被災地においても栄養士の「知識・スキルが役立つ」こと、専門職の人的支援は被災地の「心の支え」となることが明らかとなった。一方、問題点として、派遣者のスキル不足である 「状況把握不足」や「ニーズとのずれ」、受け入れ側の「準備不足」、派遣体制として「活動期間が短く引継ぎが不十分」であったこと等が明らかとなった。また、有効点にも問題点にも「熱意」が抽出され、励みにもなり、負担にもなり得ることが明らかとなった。 2.災害時における被災者支援のための栄養支援情報ツールの認知および使用状況: 東日本大震災において被災者の低栄養状態を改善するために作成された、6種類の栄養支援情報ツール(栄養の参照量、マニュアル、リーフレット、食品構成、献立例、専門家向け解説)をどれか1つでも知っている者(認知率)は36.8%、1つでも使った者(使用率)はわずか13.8%であった。行政機関で働いている栄養士は他の職域の栄養士よりも認知および使用率が高かった。 今後の有事に備え、派遣側のみならず受け入れ側(特に行政職員)の平常時からの受け入れ態勢整備や支援情報ツールの知識も重要であり、それによって専門家派遣は被災地ニーズに沿った有効な支援が実施できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の食・栄養環境に関する調査データ解析し、東日本大震災の被災地で実際に派遣された管理栄養士・栄養士による支援活動内容の実態および支援体制の影響等を解析し、論文として公表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に引き続き、東日本大震災の食・栄養環境に関する調査を分析し、東日本大震災の被災地での食・栄養問題の実態および影響要因、実際に派遣された管理栄養士・栄養士による支援活動内容の実態および支援体制の影響等を解析する。
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Causes of Carryover |
論文の査読、掲載がスムーズに進んで複数の雑誌に投稿する必要がなくなったため。 本年度得られた研究成果は、国内の読者に向けて発信する方が意義があると判断したため、英文誌でなく、日本語の雑誌を選んだため、英文校正にかかる費用を削減できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、国内のみならず海外の英文誌においても研究成果を発表する予定であるため、英文校正、査読費用、掲載料等にも使用を予定している。
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Remarks |
第3回日本災害食学会研究発表会 学術委員賞:笠岡(坪山)宜代, 上田咲子, 近藤明子, 高田和子, 「誰から優先して守らなければならないのか?~東日本大震災 被災3県調査~」 2015
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Research Products
(10 results)