2020 Fiscal Year Research-status Report
災害時における食・栄養の支援システム構築に関する研究
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15K00868
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
笠岡 宜代 (坪山宜代) 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 国際栄養情報センター, 室長 (70321891)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 災害 / 栄養 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災の被災地での食・栄養に関連する問題を解析し、その教訓と課題を平時からどのように解決できるか検討するため、学術的な報告が少ない仕組み面に着目して検討を行った。 ・災害時のニーズを把握するため、東日本大震災の被災地域に在住する栄養士を対象とした調査結果を解析したところ、欲しかった支援は「モノ」「仕組み」「情報」「ヒト」が抽出された。最も欲しかった支援は「モノ」であり、その中でも「食料」が最も求められていた。また、それらを回すための「仕組み」が必要であったことを明らかにし、国際誌で発表した。 ・災害時要配慮者(災害弱者)に焦点をあて、熊本地震における母子の食・栄養・健康問題に関するフォーカスグループインタビューにより乳幼児の食と健康の問題を明らかにした。災害時の母子支援は不十分であり、避難所に避難できない等の問題を国内誌で発表した。また、母子の課題をより客観的に把握するためコンピューターを用いたセマンティックネットワーク解析を行い、被害が甚大な地域では衛生問題が初期だけでなく中長期的にも課題となっていることが明らかとなった。アレルギーについては、被害が甚大な地域の急性期では抽出されず、生きるための最低限の食が不十分な場合には食事の質まで配慮が届いていなかった可能性が示唆され、弱者である母子を支える「仕組み」の構築が急務であることが明らかとなり、国際誌で発表した。 ・避難所での食事と栄養問題の改善方法の文献レビューを行い、避難所での食事を改善する要因としてガス、炊き出し、栄養士などの専門職による支援等の重要性を明らかにし、避難所運営の仕組みの一助となった。日本における自然災害後の健康と栄養を改善するための日本がリードする様々な取り組みを明らかにし、国内誌英語論文として公表した。 ・延期されていた災害支援者に対する調査について、対象者および手法を変更した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では災害時に派遣される派遣者への調査を予定していた。しかし、度重なる自然災害の多発により、派遣者の協力が非常に困難な状況が続いている。そこで昨年度、郵送留め置き法ではなく、より簡便に回答できるオンライン調査に変更し、災害支援活動に影響が少ない方法で行う方向で見直しを行った。 しかし、令和2年度も引き続き梅雨前線に伴う豪雨災害や台風被害により災害支援者は災害対応に追われた。さらに、今年度の新型コロナウイルス感染症の蔓延により、本研究の調査対象者である災害時対応医療者が新型コロナウイルス感染症の対応にも当たっており、医療がひっ迫している状況下で、簡便な調査であっても協力を得ることが出来なかった。 そこで、災害派遣者として当初予定していた医療者ではなく、ボランティア等で災害時に支援を行う派遣者を対象として、より簡便に回答できるオンラインを用いて行われたウェブ調査を活用し、本研究の目的に沿う解析を行う予定である。 そのため、当初の計画のうち、既存資料の分析および最終目的のシステム構築について「仕組み」について重点的に実施した。 ・災害時に欲しかった支援(Harada, Tsuboyama-Kasaokaら、IJERPH, 2020)。・災害時の母子における課題(Tsuboyama-Kasaokaら、IJERPH, 2021, 濱田, 笠岡(坪山)、小児保健研究、2020)。・避難所の食事を改善する要因(Miyagawa, Tsuboyama-Kasaokaら、Jpn J Nutr Diet, 2020)以上、4点より進捗状況を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に引き続き、過去の災害時の食・栄養環境に関する調査等を分析し、災害時における被災地での食・栄養問題の実態および影響要因、支援体制の影響等を解析する。これらの結果及びこれまでの研究成果をまとめ、どのような仕組みが災害時の食を改善できるのかを集約した災害時の支援体制を構築し、その枠組みを示す。 また、自然災害多発、および新型コロナウイルス感染症の影響により調査が延期されていた災害時に支援活動を行う様々な職種を対象とした調査については、災害派遣者として当初予定していた医療者ではなく、ボランティア等で災害時に支援を行う派遣者についても幅を広げた支援者を対象として、より簡便に回答できるオンラインを用いて行われたウェブ調査を活用し、本研究の目的に沿う解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 令和元年度に続き、令和2年度においても自然災害の多発により、研究代表者が災害対応、被災地への後方支援(熊本県庁への後方支援等)に忙殺されたため、研究にかかる費用が増えなかった。また、令和2年度は災害時に支援活動を行う様々な職種を対象とした調査を実施する予定であったが、自然災害が多発し(梅雨前線による豪雨災害等)、予定していた調査対象者である災害支援者は被災地派遣、被災地対応をしていたことに加え、さらに、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、本研究の調査対象者として想定していた災害時対応医療者が新型コロナウイルス感染症の治療にも当たっており、簡便な調査であっても行うことが出来なかったため、ボランティア等も含む広義の災害支援者を対象とした調査を活用することになり、その解析を令和3年度に行うことになったため。 (使用計画) 令和3年度は、ボランティア等で災害時に支援を行う派遣者も含めた支援者を対象として、1000名を超えるオンライン調査を解析する。さらに、これまでの成果をとりまとめ、災害支援体制を構築し、それらの成果を国内のみならず海外の英文誌においても研究成果を発表する予定であるため、英文校正、査読費用、掲載料等にも使用を予定している。
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