2015 Fiscal Year Research-status Report
過食行動がまねく摂食抑制系の機能異常に関する神経科学的研究
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15K00870
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八十島 安伸 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (00273566)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 摂食抑制性シグナル / 脳幹反応 / 消化管ホルモン / 内臓感覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
<目的>過剰摂取を生じさせる脳メカニズムの一因として、摂取後における内臓感覚・内受容感覚に基づいた摂食抑制性システムの機能不全を想定している。その仮定を検証するために、マウスにおいてショ糖間歇呈示モデル(binge モデル; Yasoshima and Shimura, 2015)を用いて、ショ糖溶液を過剰に摂取するように訓練した。そして、訓練済みのマウス(bingeモデルマウス)において、内臓感覚刺激や腸管ホルモン刺激への脳応答や、ショ糖による消化管刺激後における血糖値や腸管ホルモン動態について調べた。 <結果>(1) Bingeモデルにおける内臓刺激への脳応答:ショ糖の胃内注入によって消化管への直接的な栄養刺激を行うと、未訓練マウス群においては脳幹部での神経細胞におけるc-fos陽性細胞数が増えたが、bingeモデル群マウスでは同刺激によって活性化された神経細胞数は有意に少なかった。(2) Bingeモデルにおける消化管ホルモン刺激への脳応答:消化管ホルモン(ペプチドYY)を腹腔内投与すると健常マウス群での脳幹神経細胞は活性化されたが、bingeマウス群では応答が少なかった。(3) 消化管ホルモン動態の変化:消化管への栄養刺激を行った後での消化管ホルモンの血中濃度は健常群に比べてbinge群では少なかった。(4)Binge群マウスでは、グルコース負荷テストにおける血糖動態が未訓練群に比べて変化していた。 <結論>以上の結果から、過剰摂取を経験したマウスでは消化管ホルモン由来の摂食抑制性シグナルの減少や血糖動態、ならびにそれらの末梢由来シグナルへの脳幹部での応答性も減衰していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、上記の結果を得ており、そのデータの確定のための追加実験を行っている。また、研究途中で、結果の解釈の妥当性を確保するために条件設定の必要性があることが分かったが、おおむね実施可能な実験であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の実験を追加していく。 1)脳幹部での活性化された細胞タイプの同定 2)消化管ホルモン動態の比較検討のための量的な検討。 以上に加えて、現在検討中の消化管ホルモンは主として一種類のみであるため、他の消化管ホルモンも合わせて同様の結果が得られるのかどうかを検討していく。
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Causes of Carryover |
消化管ホルモンの動態を定量する実験において、実験措置の条件設定の見直しが必要なことが分かったので、それについて先行研究の文献調査や考察が必要となり、計画の見直したため。また、計画よりも免疫組織化学実験においても実施順序を変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消化管ホルモンの定量のためのELISAキットや免疫組織化学的染色用の抗体等の購入に充てる。また、免疫染色での細胞タイプの同定をより明瞭化するために、イムノトキシン等の利用を考慮して、その必要試薬を購入する。
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Research Products
(6 results)