2016 Fiscal Year Research-status Report
コーヒー摂取による生活習慣病予防効果の分子基盤の解明
Project/Area Number |
15K00883
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田村 悦臣 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (50201629)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多胡 めぐみ 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (30445192)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | コーヒー / 生活習慣病 / 認知症 / 白内障 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
一日3~5杯のコーヒー喫飲の習慣が、糖尿病やがん、認知症など、様々な生活習慣病のリスクを低減する効果があることが報告されているが、その効果の科学的根拠やメカニズムには不明な点が多い。そこで、本研究では、コーヒーの生活習慣病予防効果を分子レベルで解明することを目指している。 28年度では、まず、認知症予防効果について研究を行った。一日3~5杯の習慣的なコーヒーの喫飲がアルツハイマー病の発症リスクを低減させるという疫学研究や、アルツハイマー病モデルマウスに4~5週間カフェインを摂取させると海馬のアミロイドタンパク質の蓄積が40%減少したという報告等がなされ、コーヒーの認知症予防効果が注目されている。カフェインがこの抑制効果の本体であるという報告もあるが、カフェイン以外の成分の関与も示唆されており、有効成分や分子メカニズムについて、十分解明されてはいない。アルツハイマー症の発症には、βおよびγセクレターゼによるアミロイド前駆タンパク(APP)の切断によるアミロイドβ(Aβ)タンパク質の分泌・蓄積が関与している。重篤な副作用が予想されるγ-セクレターゼの抑制に比べ、β-セクレターゼ(BACE1)の抑制はより副作用の少ないアルツハイマー病のターゲットと考えられている。我々は、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Yを用いてコーヒーによるBACE1発現への影響を検討した。その結果、コーヒー添加によりBACE1のタンパク質量は用量依存的および経時的に減少することを見出した。この時、BACE1のmRNAに変化はなく、BACE1タンパク質の分解促進が起きていることが示唆された。また、コーヒーによるBACE1タンパク質の分解促進効果は、カフェインなどの主成分ではなく、酢酸エチルに可溶な焙煎成分であることも判った。タンパク質分解の促進効果のメカニズムを解析した結果、コーヒー成分によりプロテアソームによるBACE1分解の促進が起きていることも判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度はコーヒーの生活習慣病予防効果のうち、認知症および白内障への効果について解析を行い、認知症予防効果については神経細胞におけるAβ産生に関わる酵素活性に対する抑制効果を見出し、そのメカニズムの一端を明らかにできた。さらに、白内障予防効果については、コーヒーの焙煎成分ピロカテコールが、強い抑制効果を示し、水晶体内の抗酸化活性への効果であることを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
コーヒー成分により神経細胞のAβ産生に関わるBACE1タンパク質のプロテアソームによる分解促進効果が見られた。今後、この分解促進効果の分子メカニズムをさらに詳しく解析する。プロテアソームの活性化にはいくつかのメカニズムが知られており、それらについて可能性を検討する。さらに、コーヒーによる脂肪細胞の分化抑制効果もIRS1のプロテアソームによる分解促進であることが判明しており、BACE1への効果との相同性についても解析を加える。また、この促進効果を示すコーヒー成分の分離・同定を推進し、得られた成分について動物レベルでの効果を見る。
|
Causes of Carryover |
ほぼ予定通り使用できたが、端数が残った。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度へ繰り越して使用する。少額なので、計画の変更はない。
|
Research Products
(11 results)