2016 Fiscal Year Research-status Report
児童に家庭での朝食作りを促すプログラムが朝食の質と食事観を向上させる可能性
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15K00897
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
小切間 美保 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (30269849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉本 優子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40255914)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 小学生 / 調理 / 食育 / 自己肯定感 / 学習態度 |
Outline of Annual Research Achievements |
小学生を対象とした質問紙法による大規模調査を実施し「調理経験が,食事観だけでなく自己肯定感や学習に対する態度,心身の健康と関連する」という仮説を因果モデルにより検証した。【方法】近畿圏の小学4~6年生749名を対象とし,全ての質問項目に回答した485名について分析した。質問紙は6分類から構成され,調理経験34項目,食事観8項目,自己肯定感22項目,学習意欲12項目,教科に対する関心12項目,心身の健康6項目の94項目であった。作成には独自の項目に加え,文部科学省平成27年度全国学力・学習状況調査,東京都自尊感情測定尺度を引用した。IBM SPSS Statistics 24を用い,分類ごとに探索的因子分析を行い,因子間の関連はAmos 24を用いて共分散構造分析を行った。本研究は,同志社女子大学倫理審査委員会において承認された(No.76)。 【結果および考察】探索的因子分析の結果,調理経験は「調理技術」,「調理頻度」,「調理への自己効力感」などの6因子,食事観は1因子,自己肯定感は4因子,学習意欲は2因子,教科に対する関心は3因子,心身の健康は1因子が抽出された。共分散構造解析の結果,モデルの適合度指標はGFI=0.920,AGFI=0.875,RMSEA=0.073であった。調理経験は食事観(0.82),自己肯定感(0.64),学習意欲(0.27)への直接の関連が認められ,それらを介して教科に対する関心(0.23,0.30,0.27)への関連が認められた(p<0.001)。また,調理経験から食事観を介し,心身の健康(0.34)への関連も認められた(p<0.001)。以上より小学生の調理経験は,直接的に食事観,自己肯定感,学習意欲に影響を及ぼし,間接的に教科に対する関心,心身の健康に影響を及ぼすことが示唆された。現在この成果を論文投稿するため準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年から4小学校において,調理を促す食育プログラムを開始しており,現在進行中である。各小学校の事情により食育プログラムのスケジュールが多少ずれるという状況は生じているが,おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目介入プログラムを実施する。内容は,H28年と同様に家庭における児童の調理体験,朝食作りの推進を目的とする。調査項目も同様に朝食内容,調理経験,食事観,学習態度,自己肯定感とし,対象はH28年に介入を開始した児童(H29年現在6年生)とする。 2年目のプログラムは5月中に開始する。新教材ワークブックなどを加えたグループワークやワークショップを準備し,朝食の重要性,調理の楽しさを伝える授業や声かけを行う。ワークブックについては,2年目用にリーフレットタイプの教材を作成しており,それを小学校の授業の進行状況や食に関する指導の全体計画に合わせ,カテゴリーごとに配付していく。夏期休暇および冬期休暇には調理を促す指導と記録表を配付し課題とする。そして,1月(H30年)の最終フォローアップ調査を行うとともに,新教材ワークブックを回収し,記入状況を評価する。さらに,教員および保護者の意見や感想を質問紙により調査する。結果の分析は,①介入1年目のベースライン調査結果と1年後および2年後のフォローアップ調査の同一質問項目における変化を分析し,プログラムの効果を考察する。②H27年の横断調査結果の6年生とH29年の介入後の6年生について,同一質問項目を比較し介入の効果を考察する。③教員および保護者の意見について集計する。①~③を統合して本プログラムの有効性を考察する。 以上の研究を遂行するために,調査実施の人件費(研究協力者らに依頼予定),交通費,データ入力の委託費および自由記述のデータ分析の人件費,追加教材作成の費用,印刷費が必要である。また,調査,学会発表のための旅費と論文校閲等の費用も必要となる。
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Causes of Carryover |
無理に不要な物品の購入を避けた結果,残金148円が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
食育介入プログラムの実施における媒体作成に文具が必要になるため,その費用に充当する予定である。
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