2016 Fiscal Year Research-status Report
空間の想像力育成のための「対象/視点」に着目した中学校図形教材の開発
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15K00911
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
太田 伸也 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50322920)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 空間の想像力 / 対象と視点 / 中学校図形教材 / 空間図形 |
Outline of Annual Research Achievements |
空間における問題解決における「対象/視点」(何をどこから観るか)の顕在化に焦点をあて,昨年度に実施した実験授業の分析,及び,新たな教材の開発と実験授業に取り組んだ。 前者については,第一に,南半球での日の出・日の入の方位について考える場面での生徒の協働的な活動をとらえ,「対象/視点」を分析した。地球儀を用いて議論している場面では,「対象/視点」が把握されやすかった。例えば,太陽の位置に手などを置いて視覚化していること,仮想の太陽が見える位置に目を動かしたり,逆に太陽の位置から地球を観たりすることで視点を移動させて確認したりしていることなどがこれにあたる。一方,「対象/視点」が言語化されることは少なかった。第二に,「南半球では太陽は(南と北の)どちらを通るか,時計回りか反時計回りか」を問題とした授業については,視点の変更,コミュニケーションによる視点の共有,図に表現する方法,を観点として分析した。この問題は,視点の位置を意識する必要が生じる場面として設定したものである。生徒の活動から,3次元の模型の役割の重要性,生徒自らが視点の意識化をはかる指導の必要性等が指摘された。この2つの分析は,いずれも日本数学教育学会秋期研究大会で口頭発表を行った。 後者については,平成29年3月に,「対象/視点」の意識化をねらいとして,「立方体を対角線の方向から見る」(中学1年),「札幌と那覇で北極星を観るとどちらの方が高く見えるか」(中学2年)という問題による実験授業を,それぞれ研究協力者に依頼し実施した。この分析と考察は平成29年度の課題である。なお,第13回数学教育世界会議(ハンブルク,平成28年7月)では,「対象/視点」の枠組みをポスター発表に提出した。また,教材開発の一環として,天文現象の教材例として「スーパームーン」の映像を撮影した(平成28年11月,大学院生の研究協力者に依頼)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度の授業分析,実験授業の計画については,まだ課題を残していると考えている。平成28年度は研究代表者の校務による緊急の対応のため,予定していたエフォートを確保できなかったことがその理由である。 当初の計画では,実験授業の分析や計画段階における「対象/視点」についての分析を通して,「対象」や「視点」が視覚に頼らず想像による場合を,問題解決のプロセスに位置づける可能性を明らかにしようと考えていた。この点が来年度に残されたため,現段階の研究の進行はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の実験授業の再分析,及び平成28年3月の実験授業の分析を通して,空間図形を観る活動における「対象/視点」の枠組みを,問題解決のプロセスに位置づけることを第一の課題とする。その上で,当初計画していたように,「対象/視点」の枠組みをもとに教材を開発するモデルを示す。その中で,中学校数学のカリキュラムに新しい内容と方法を取り入れる場合,現行のカリキュラムを大きく変えずに授業で用いる問題を開発する場合について,具体的な問題を示せるようにする。これらの実践と検証については,来年度以降の新たな研究課題となると考えている。
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Causes of Carryover |
平成28年7月にハンブルクで行われた第13回数学教育世界会議に研究協力者とともに参加したが,予算不足が見込まれたため,1名分を他から支出した。そのため,旅費として予定していた予算の一部を平成29年度に繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した予算は,主として研究報告書の作成費用の補充に充てる予定である。 また,平成29年度の日本数学教育学会の秋期研究大会には,実験授業を担当した研究協力者2名とともに参加し発表を行うことを予定しており,発表原稿の打ち合わせを含め,国内旅費を増額して計上する計画である。
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Research Products
(5 results)