2017 Fiscal Year Research-status Report
空間の想像力育成のための「対象/視点」に着目した中学校図形教材の開発
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15K00911
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
太田 伸也 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50322920)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 空間の想像力 / 空間図形 / 対象と視点 / 立体模型の観察 / 変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,平成29年3月に実施した2つの実験授業の考察に取り組んだ。また,「対象/視点」の枠組みについて,変換との関係をより明確化することを課題としたが,これは本研究の成果報告書の作成と合わせて30年度に持ち越すことにした。 1つ目の実験授業は,立方体の模型を観察する場面を取り入れ,生徒の協働的な活動における「対象/視点」を分析したものである。この授業の特徴は,立方体を正六角形に観るときの視点や視線を意識させ,立方体の対角線の実長が表れるかを考える問題を取り入れたことである。立方体の模型を教具としたことで生徒の「対象/視点」が顕在化され,生徒が互いに異なる「対象/視点」を共有していく過程を把握することができた。一方,それを「視点」「視線」などの言葉を用いて言語化させていくためには,教師の関わりが重要な役割を果たしていることが明らかになった。この授業は「対象/視点」の意識化のための指導モデルとして分析,整理する必要がある。 2つ目の実験授業は,「札幌と那覇で北極星を見ると,どちらが高く見えるか?」を考えさせたものである。空間図形の問題を解決するために,対象となる空間図形を投影図や断面図などに置き換える活動が表れる。これにより,対象から離れて平面図形の問題として処理することができる一方で,空間における対象と2次元表示された平面図形の対応を明確にしなければ,どのような変換が行われたかが不明確になり,誤った推論をしたり,議論が混乱したりすることがわかった。授業でこのような場面を意図的に作り,置き換えた平面図形と元の空間図形との対応を意図的に問うことの重要性が示唆された。 なお,中学校理科の題材である天球概念の理解について数学教育の立場から見直し,数学教育が担うべき課題を明らかにすることを課題として考察を進めた。これは,「対象/視点」の枠組の検討と関連する課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年から29年までに日本数学教育学会秋期研究大会発表集録に掲載した6件の論文(口頭発表)を中心に,研究過程でのデータ等を整理し,報告書をまとめる作業を進めているが,前提としていた「対象/視点」の枠組みの再検討等について,想定以上に時間がかかっているのが1つの理由である。 また,研究代表者が平成28年度から副学長を併任し研究時間が十分に確保できなくなったことも影響している。 当初は平成29年度末に研究成果報告書をまとめる予定であったが,上記の理由により,延長申請を行い,平成30年度末までにまとめることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度から29年度までの実践研究を振り返り,「対象/視点」の枠組みについての再検討を行う。この結果を含めて平成30年度に研究成果報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
平成29年度末までの研究のまとめが遅れたため,作成予定であった研究成果報告書(冊子)の印刷費を使用しなかった。 平成30年1月に補助事業期間延長承認申請書を提出し受理されたため,繰り越した予算は平成30年度の研究成果報告書の作成・印刷及び郵送費に充てる計画である。
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Research Products
(6 results)