Outline of Annual Research Achievements |
我々の身近な場所に多くの「鳴く虫」が棲息している。本邦では古来より,鳴く虫を愛でる文化があり,セミやキリギリス,スズムシなどは俳句の季語や文学作品にも使われる。鳴く虫は,昆虫類の中でも親しみやすく,身近な存在であるが,その分類や生態は解明されていないことも多い。本研究では,昆虫類の中の鳴く虫の分類と生態,特に鳴く時間帯や時期(季節)を調べ,その結果をもとに小中学生向けの教材開発を試みた。 近年,身近な場所にも多くの外来昆虫の存在が知られている。鳴く虫を愛でる文化の一端を,外来昆虫に依存している可能性もあると考え,在来種だけではなく,外来種に関してもデータ収集を行った。 調査は,野外で鳴く虫の声を録音して音源を保存すること,その音の主を採集し,鳴いている時間帯を記録し,また周年の鳴く時間,時期を表すカレンダーの製作を試みた。 教材化に関しては,まず,子どもや現職教員に音(鳴き声)を聞いてもらい,その音を紙に書いて表現する, という作業をしてもらった。その後,他の子どもや教員の書いた音の表現を見て,その音を真似ることができるかを試してもらった。カタカナ書きの音(鳴き声)の表現にも多様性があり,濁点や小文字,ハイフンの使用法等も様々で,表現が一致することはほとんとどなかった。また,他者が書いた音(鳴き声)の表現を真似るという作業もかなりの困難を伴うことが明らかとなった。 これらの活動を通して,子どもや教員が鳴く虫やその鳴き声に興味をいだくことは明らかであるものの,その声を記憶し,野外で実際に聞き分けることは困難であると考えられる。 今後は,多くの種の鳴き声の音源収集を行い,声の主との対応をつけ,鳴く虫カレンダーの充実に努めながら,子どもや教員が野外で鳴く虫の声を聞き分けられるような教材開発を行っていきたい。
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