2015 Fiscal Year Research-status Report
新学習指導要領に対応した生物教育用語の選定と標準化に関する研究
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15K00918
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
渥美 茂明 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (70144623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 智紀 麻布大学, その他部局等, 講師 (00367244)
笠原 恵 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (20243347)
向 平和 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (20583800)
西野 秀昭 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (40198487)
真山 茂樹 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40199914)
武村 政春 東京理科大学, 理学部, 准教授 (50303623)
片山 豪 高崎健康福祉大学, 人間発達学部, 教授 (60635754)
渡邉 守 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (80167171) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生物教育 / 教育用語 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等学校の生物分野の教科書(「生物基礎」と「生物」)は,最近の分子生物学の進歩に伴う知見や新技術を大幅に取り入れるように学習指導要領が改訂されたため、新たな用語が多数取り入れられた。生徒達は「覚えなければならない言葉が多くて、生物を選択したくない」と言っているようだ。高等学校で生物を選択する生徒が激減することを防ぐためにも,教科書に出てくる用語を整理する必要がある. 「生物基礎」と「生物」の教科書(5社、15点)から,「用語」を抽出し,データベース化して,過剰な用語が記載されているか検証するとともに,個々の用語の高校生物における重要度を評価しようと本科学研究を計画した.さらに,必要があれば,用語の取捨選択などの整理を行うための基礎的なデータを各界に提供したいと考えている. 研究は研究分担者9名,協力者6名で組織した.第1回研究会を平成27年7月18日(参加できなかった分担者と協力者は8月29日)に神戸市内で開催し、科研申請の経緯と研究計画について確認するとともに,今後の研究計画を検討した.あわせて,用語データの収集するために@Wiki上に構築したウエブサイトの操作方法を説明するとともに,データ入力の分担を決めた.平成28年1月8日に日本生物教育学会全国大会(東京)にあわせて臨時の研究会を持ち,作業の進捗状況や今後の予定を確認した.平成28年2月21日に第2回の研究会を神戸市内で開き,入力済みの「生物基礎」の点検の方針と分担を決めた。また,28年度の「生物」の用語入力に向け,データの入力形式を再確認した.合わせて用語の評価方針を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5社それぞれから出版されている生物基礎と大判生物基礎の教科書10点について,見出し語や本文中に太文字で示された用語、それぞれの索引語、および本文中に出現する語を用語として抽出し,教科書ごとに用例、出現ページ、扱い(本文、図、発展などの別)、索引収録の有無とともに収集した。 各地に分散している分担者と協力者が分担・協力してデータを入力するため,データを入力には,インターネットホームページ作成サービス@Wikiを利用した.しかし,個々の用語の使用頻度など統計的に分析したり、類似語を検出したりするために,@Wikiに収録した用語データの取り出しに取り組んだ。その結果,「生物基礎」の用語データ1228個をファイルメーカPro上にデータベース化した. 第2回の研究会では,入力時や未整理の用語表をもとに検討した。その中で、表記と呼称の揺らぎが多いことが学校現場での指導上の問題点となると指摘された。例えば、草食動物のことを,食植性の動物、食植性動物、食植動物、あるいは植物食性動物と記載していたり,免疫MHCを主要組織適合抗原や主要組織適合性複合体と書いていたりする.この揺らぎが,1社ないし2社の教科書にしか見出されない用語が頻出する原因になっているという指摘がなされた.また、用語の階層性を意識した分類の必要性が指摘された.さらに、用語の誤用・死語・不適切領域語や、差別語の使用を指摘する意見があった。このような用語の揺らぎやその他の問題を含む用語の使用は入試の不利益を生む可能性が存在する。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度には5社5種類の「生物」に出現する用語を「生物基礎」と同様の方針でインターネットホームページを使って収集するとともに、収集した用語データをホームページから取り出しデータベース化を行う.「生物基礎」から集めた用語は,その特徴と傾向を評価する.評価の基準についてつぎのように考えている.各単元の用語をA:最重要(単元内容を説明するのに必要最小限の用語 各単元10個程度を予定)B:重要(扱っておきたい用語)C:扱ってもよい(取捨選択の任意性が高い)D:必要のない用語.この基準に基づいて用語を評価する準備を整えつつある.Bの用語にはAの用語を説明するのに必要不可欠な用語が自ずと含まれ、用語の階層性を意識した評価が行われると期待している.この評価方針を,29年度に計画している「生物」の用語分析にも適用したい. 28年度と29年度をかけて,「現在までの進捗状況」に示したような表記と呼称の揺らぎが存在する用語を「基礎生物」と「生物」の用語から抽出し、揺らぎの解消を目指して,生科連に加盟する関連専門学会向けの検討資料の作成につなげたいと考えている.また,明らかな誤用や死語など不適切な用語を指摘し,各社に訂正を求めることも検討したい. 用語数が不必要に大きくなることは,「研究実績の概要」にも指摘したように,高等学校理科で生物を選択する生徒数をいたずらに減少させかねない。このような事態を防ぐために,教科書出版社各社に適切な編集を求める資料を作成することができることを期待している。
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Causes of Carryover |
当初計画では,7月と2月に宿泊を伴う研究会を持つ予定でいたが,分担者と協力者の都合が合わず,予定通りに研究会を開くことが出来なかった.特に,第1回(平成26年7月18日と追加分8月29日)の研究会は分担者と協力者には日帰りの研究会となった.そこで、不足分を,関係者が揃いやすい生物教育学会全国大会の前日1月8日に開催して補った.平成28年2月21日の第2回研究会は,朝から夕刻までの研究会を開くことが出来たが、1月の会合の旅費を科研費で処理しなかった分担者が多かったため、予算に計上してあったにもかかわらず支出できなかったため,未執行残高を増やすことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は,年度末に1回の研究会を予定していたが,予算の繰り越し分を使って,1ないし2回の追加の研究会を開き,研究の進行と研究内容の精査に努める予定である.熊本の震災のため,本年度の生物教育学会も東京で開催されると思われるので,8月下旬と1月に研究会を開く予定である。 また,収集しいた用語をデータベースソフトで解析する見込が立ったので,分担者と協力者にも研究費を使ったデータベースソフトウエアの導入を要請して,研究費の有効利用を図る予定である.
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