2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K00919
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
吉田 信也 奈良女子大学, 全学共通, 教授 (30740120)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 物理・数学 / シミュレーション / GeoGebra |
Outline of Annual Research Achievements |
女性が数学・物理を好まない理由の1つに,眼に見えない物理現象や抽象化された数学的概念を学習しなければならないことがある。そこで,シミュレーションを利用して現象や概念を視覚化し,数学・物理の学習への興味付けと理解を深めることを中心に研究を進めた。 附属中等教育学校の物理教室にiPadmini22台等を設置し,生徒がアクティブに学習できる環境を構築した。そして,図形・グラフ描画,表計算,数式処理を行えるフリーウェアGeoGebraを利用して,うなりの解析・ベクトル方程式の視覚化・波の広がりのシミュレーションを作成し,授業を実践した。実験教室でもじゃまにならない小型のiPadmini上で,多様な機能を1つのソフトウェアで活用できる環境は,教員のシミュレーション作成の負担や,生徒や操作上の戸惑いを軽減して有効であることが確認できた。 また,物理と数学の連携実践として,バネの振動とRLC回路の波形について微分方程式を利用する授業を開発した。これらの現象をモデル化することを通して現象の理解を深め,そのモデルを微分方程式で表す。高校数学では,この微分方程式を解析的に解くことはできないが,GeoGebraの数式処理機能を活用することで解曲線を得る。この学習を通じて生徒は,バネの振動とRLC回路の微分方程式の形が同じであることに気づき,数学の有用性を感じることができた。しかし,数式処理機能を活用することは,解を求める部分をBlackBox化することなので,差分方程式を利用して数値解法を体験的に理解できる方法も取り入れた授業を構成した。 さらに,高等学校においても扱われる自然界における黄金比,フィボナッチ数という題材について,数学的な操作はしているが,自分の思い込みや思い入れでこれらを賞賛しているだけであることを指摘し,数学による科学的な説明・解明を行う必要があることを理解させる教材を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,課題の1つである「ICTを活用した数物教育の研究」を中心に研究を行った。これは,年度当初にICT環境の整備を行い,それを具体的に活用することでICT活用の有効性を検証することが必要であると考えたからである。この点では,教材開発と実践を行うことができ,当初の計画以上に進展している部分もある。また,最終目標である課題「数学と物理を統合したテキストの作成」については,このための題材の発掘と教材の開発を順調に進めている。 しかしながら,「女子生徒が興味・関心を持つ理数教育方法の研究」のための,基礎データを収集する目的で実施する予定であった質問紙調査は,次年度に持ち越した。これは,質問内容の吟味を最終段階まで詰めることができなかったためである。 以上より,おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
第1年次の「ICTを活用した数物教育の研究」の研究を継続し,教材やシミュレーションソフトを深化させるとともに,新たな題材を発掘して研究を進める。 また,第2年次は,物理・数学教育を中心とした高校生への質問紙調査を実施する予定である。この調査結果も参考にしながら,女子生徒が興味を持って学習できる物理・数学における教材や教授方法の研究開発を行う。 以上の成果を,最終年度に実施予定であるテキストの作成に向けて整理し,まとめていく。
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Causes of Carryover |
高校生への質問紙調査を,次年度に延期したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分と合わせて質問紙調査を実施し,そのデータを分析するために使用する。
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