2015 Fiscal Year Research-status Report
グローバル時代に対応した物理教育コンテンツの研究開発
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15K00931
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
並木 雅俊 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (90150656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 忠芳 金沢工業大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30460413)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際物理オリンピック / 基礎物理学実験 / IPhO実験再現 / 世界標準物理実験 / 物理の基本を伝える実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.「国際標準の物理実験課題およびその解答例の日本語版の作成」:国際標準の物理実験を考えるに際して、国際物理オリンピック(IPhO)実験課題を手掛かりとした。IPhOは、1967年に第1回大会がポーランドで開催され、50年程の歴史がある。コンペティションであるため競技に適した実験課題が主であるが、物理学の基本を伝える教育的な実験課題も多い。これらは、大学の基礎物理学実験あるいは高等学校の発展的な実験の課題を考える際に役に立つ資料にもなる。IPhO課題と解答を翻訳し、電子的媒体あるいは冊子体として、それらを公にすることで、物理教育に貢献したい。 2.「IPhO実験再現」:2015年まで(知ることのできる)IPhO実験は71課題ある。これらIPhO実験課題の中から、物理学の基本を伝え、次の学びの一歩となっている実験を選択する。さらに器具・機器等において、高等学校においても準備可能な実験を選択するよう考慮する。選択の際には、競技に適した課題であっても、教育的観点から、実験課題が、①基本的であるか、②効率的であるか、③決定的であるか、④実施が容易であるかを考察する。これら選択のもと、IPhO実験の再現を試みる。 3.「物理実験教育プログラムの研究開発およびそのコンテンツ化」:初等中等教育段階の算数・数学および物理系分野の内容を包含した、大学初年次教育における学びに対するレディネスを整備することを目的として、数理的物理的概念形成を支援する教育プログラムおよびそのためのコンテンツの研究開発を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.「国際標準の物理実験課題およびその解答例の日本語版の作成」:平成27年度において、国際物理オリンピック(IPhO)実験課題の翻訳作業は、1967年から1985年まで行った。IPhOの問題・解答が残っているのは第28回カナダ大会(1997年)以後であり、それ以前は実施国委員のメモによるところが多く、どのような問題が出題されたかもわからない大会すらあった。実験装置・器具、方法、結果が未知であるため、これらを単に和訳しただけではほとんどわからない。解説を入れつつ、読み手にわかる翻訳を心がけた。 2.「IPhO実験再現」:平成27年度において、次の4つの実験を試みた。(1)「石油の比熱」(第1回ポーランド大会):課題の石油と水の比熱だけではなく、安全を考慮してエタノール、メタノールの定圧比熱を加熱法と冷却法で測定した。熱量、冷却を学ぶのに適切な実験課題である。(2)「空洞のある円筒物体の密度測定(第6回ルーマニア大会):円筒形の木材と蝋を用いて器具を作成し、測定は比較的容易であり、浮力の計算は高校数学で可能である。(3)「ゴム弾性」(第12回)ブルガリア大会):輪ゴムに小物体を吊るして、小物体の質量とゴムの伸びの関係を調べ、その結果からゴムの体積を求めた。高弾性であるゴムを考察できる実験であり、測定は単純であるが解析には工夫を要する。(4)「回路設計と電力測定」(第15回スウェーデン大会):正弦波発信器に接続した抵抗器が消費した電力を求める実験課題である。簡単な交流回路を学べること、またオシロスコープに慣れることにも適している。 3.「物理実験教育プログラムの研究開発およびそのコンテンツ化」は、分担者の田中忠芳が行い、学会にて報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.「国際標準の物理実験課題およびその解答例の日本語版の作成」:平成28年度おいて、国際物理オリンピック(IPhO)実験課題の翻訳作業は1986年から2000年まで行うことを予定とする。 2.「IPhO実験再現」:第1回ポーランド大会(1967年)から第46回インド大会(2015年)まで知ることのできる実験問題は71題であり、その内訳は、力学11題,流体2題,熱4題,音2題,光25題,電磁気26題,データ解析1題である。光と電磁気からの課題が多く、大学の基礎物理学実験に適した課題として期待できるものも多くあると考えられる。このため、平成28年度において、次の7つの実験課題の実施を検討している。①「水滴虹の屈折角の測定(第17回イギリス大会)」、②「偏光と複屈折(第19回オーストリア大会)」、③「プリズムと液体の屈折率(1987年東ドイツ大会)」、④「液体窒素の蒸発熱(1993年アメリカ大会)」、⑤「円柱形永久磁石の磁気モーメント(1993年アメリカ大会)」、⑥「回転液体から重力加速度を求める(2001年トルコ大会)」、⑦「繊維状分子からなる物質の屈折率(2003年台湾大会)」である。 本年度は、翻訳と実験再現に重きをおいて活動する予定とした。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、低価格で可能な再現実験を選択したこと、実験設備の整った実験室を使用できたこと、打ち合わせを近隣で行ったことが、計画より少ない予算で済んだな理由である。また、成果の公開を冊子体として公開した方が目的に合っている考えている。これらを考慮し、大学の基礎物理学実験に役立つように、本年度は翻訳と再現実験に重きをおいて活動する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果の公開として、冊子体を考えることにすると、その分の予算(150万円程度)を最終年度に残すことが必要となる。このため、今年度においても、無駄なく合理的に実験することを心掛けている。
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Research Products
(5 results)