2016 Fiscal Year Research-status Report
グローバル時代に対応した物理教育コンテンツの研究開発
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15K00931
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
並木 雅俊 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (90150656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 忠芳 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (30460413)
佐藤 誠 津山工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90413830)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際物理オリンピックオリンピック / 基礎物理学実験 / IPhO実験再現 / 世界標準物理実験 / 物理の基本を伝える実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は,①国際標準の物理実験課題およびその解答例の日本語版作成,②国際物理オリンピック(IPhO)実験再現,③物理実験教育プログラムの研究開発およびそのコンテンツ化である.28年度は,IPhO実験問題の再現を継続した. IPhO実験問題は,第1回大会(IPhO1967)から第47回大会(IPhO2016)まで計73課題ある.その分野ごとの内訳は,力学11,流体2,熱4,音2,光学25,電磁気27,統計物理1,データ解析1である.28年度は,光学分野から「偏光(IPhO1988)」と「プリズムの屈折率(IPhO1987)」の実験,力学分野から「回転流体を用いた重力加速度の測定(IPhO2001)」の再現を行った. IPhO「偏光」の出題意図の分析を行い,簡便に実験を行えるユニット構造を採用した偏光実験装置を試作して評価した.ユニットは回転機構と角度目盛りを設けた偏光フィルター,ガラス板,試料の他,固定された偏光板,波長板,色フィルターから構成され,実験の目的に合わせてユニットを直列に接続して用いる.ブリュースター角からガラス板の屈折率を測定,光弾性の観察,複屈折特性を持つセロテープを積層した試料で位相差の測定が可能であることを確認した.「偏光」は,高校教科書『物理』に記載はあるが,現象の説明にとどめている.今回作成した簡易装置により,偏光および複屈折の概念理解に役立つと考える. IPhO「屈折率」は,筆記用具・物差し・方眼紙のみを用いて,与えられたプリズムの屈折率を求めることである.IPhO使用のアッペ・プリズムは高価なため,一般的な直角プリズム,台形プリズム,それに長方形ガラスを用いた.2つの方法で再現し,教育に適した題材であることが確認できた. 「回転流体を用いた重力加速度」の実験は岡山一宮高校の生徒に取り組んでもらった.結果は良い値は得られなかったが,容易に原理を理解することができて適切な教育題材であることが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.翻訳作業は,下訳は終了している。実験実施に合った表現・内容ともに,読み手に取って易しい文章とするために予想以上に時間を必要としている.原文が不十分であることに由来する.現在,下訳から満足の行く翻訳は終えたのは3割程度である.原文がしっかりしてきた2000年前後までの翻訳を完成し,公開する. 2.物理学の基礎を伝える実験を選択し,実施している.再現実験を実施するこあたって,代替装置を用いての実験は予想通りに行かないことが思いのほか多い.現在,「ゴム弾性」「円筒物体の浮力」「回転流体による重力加速度測定」「液体の比熱」「回路設計と電力の測定」「偏光と複屈折」「屈折率」の7つの実験を再現したが,次期も光学実験に重点をおいて行う. 3.実験装置を安価で作製することには多くの工夫が必要である.安価で作成できなくては,多くの教育の場で使用していただくことはできない.
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Strategy for Future Research Activity |
第17回イングランド大会(IPhO1986)の実験問題「虹」と,第24回アメリカ大会(IPhO1993)の実験問題「磁気モーメント」の再現と教材化を進める.実験問題「虹」の出題では,コリメータ付光源,角度測定に望遠鏡付分光器を用いているが,虹の散乱角度を測定する目的ではコリメータ,望遠鏡を用いず,さらに暗室を必要とせず,簡易な角度測定器のみで測定が可能と考えている.これは液滴で散乱された光線を角度と共に空間的に分離して観察できることによる.後者の実験問題では,磁気モーメントと磁場の測定を磁石の回転振動周期から計測する手順が複数存在し,教材化した際に教育効果が高いと期待される. 実験問題翻訳を第34回台湾大会(IPhO2003)まで完成させる。また、冊子体(予定256頁)作成のための執筆作業を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度も,平成27年度に引き続いて,低価格で可能な再現実験の課題を選択した.これは,大学初年級あるいは高校物理の授業において使用可能な実験とするに必要なことと考えたためである.また実施においても,実験設備の整った実験室が使用できたこと,低価格を常に意識して行ったこと,打ち合わせにも可能な限り,電子メール・電話を使用したことが少ない予算で済んだ理由である.また成果の公開は冊子体で行う予定であるため最終年度に残しておくためでもある.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果報告を冊子体とするには,その分の予算(約150万円)を最終年度に残しておくことを予算計画に入れている.今年度は、国際物理オリンピック実験問題再現を光学と磁性体に絞り,翻訳と冊子体のための執筆を重点的に取り組む予定である.
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Research Products
(3 results)